平成26年第47回

【解答(呼吸器編)】平成26年第47回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)

こんにちは!

あすはやです。

平成26年度 第47回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は呼吸器 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

呼吸器(問1~問10)

呼吸器 問1.正しいものどれですか.

A.Ⅰ型肺胞上皮はガス交換に関与する.

B.呼吸細気管支には杯細胞が分布する.

C.生理的には肺胞腔内には細胞が存在しない.

D.気管支粘膜にみられる気管支腺は粘液腺である.

E.呼吸細気管支には線毛は存在しない.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

細気管支・・・単層線毛円柱上皮。分布はしているが杯細胞は少ない。

※区域気管支までは粘液腺、混合腺(漿液腺)存在する。

こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

http://www.lab2.toho-u.ac.jp/med/physi1/respi/respi4,5/respi4,5.html

 

呼吸器 問2.肺病巣から採取した細胞診で,正しいものはどれですか.

A.細胞検体を用いて遺伝子検査をすることは困難である.

B.肺癌の細胞診においては小細胞癌か非小細胞かの判断に加え、 腺癌か扁平上皮癌かの判断も求められる.

C.腺癌か扁平上皮癌か判断に迷う場合には,非小細胞癌との判断にとどめるのが妥当である.

D.腺癌細胞の場合,肺原発と他臓器からの転移との鑑別には,CEA の免疫染色が有用である

E.偶然発見された若年者の境界明瞭な腫瘤性病変は,カルチノイドであることが多い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

細胞診検体を用いて遺伝子検査をすることは可能です。

肺腺癌の原発とメタの鑑別↓

原発では、TTF-1,NapsinA,Surtactant apoproteinが陽性。

転移性の鑑別

CK7 CK20 CDX-2
+
大腸 + +

CEAは消化器癌、肺(30%~50%)、乳腺、子宮、尿路系、甲状腺髄様癌で陽性となる。

カルチノイド・・・気管支粘膜下腫瘤なので喀痰に出ることはない。40~50歳代で多く、半数は無症状。若年者とは書かれていない。

 

呼吸器 問3.肺癌の組織型と細胞型について正しいものはどれですか.

A.腺扁平上皮癌は扁平上皮癌成分10% 以上,腺癌成分5% 以上を含むものである.

B.肺芽腫には時に骨肉腫が混在する.

C.定型的カルチノイドでは壊死はみられない.

D.粘表皮癌では角化を認める.

E.小細胞癌では細胞境界は明瞭である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

腺扁平上皮癌・・・扁平上皮癌成分、腺癌成分のいずれかの成分が少なくとも腫瘍全体の10%を占めているもの。

肺芽腫

成人型:肺芽腫(高分化胎児型肺腺癌、二相性肺芽種)

小児型:胸膜肺芽腫(5歳以下、特に3歳以下の乳幼児)

肺芽腫は腫瘍性の上皮成分と未熟な間葉系成分が混在した二相性を示す、まれな腫瘍。小細胞癌、腺癌、類内膜腺癌などの成分や軟骨肉腫に似た成分が混在する。

粘表皮癌・・・扁平上皮、粘液産生細胞、両者の中間型からなる。角化をみることは、まれである。

小細胞癌・・・細胞境界は不明瞭で核圧排、木目込み細工様、インディアンファイルで見られる。

 

 

呼吸器 問4.多形癌として正しいものはどれですか.

A.異所性成分を含む肉腫成分を有する.

B.紡錘細胞が腫瘍全体の20% 以上を占める.

C.小細胞癌の成分を有するものもある.

D.紡錘細胞と巨細胞からなる腫瘍もある.

E.低分化な非小細胞癌である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

多形癌・・・紡錐形細胞あるいは巨細胞を含む非小細胞癌(即ち扁平上皮癌、腺癌あるいは大細胞癌)、または紡錐形細胞と巨細胞だけからなる非小細胞癌。紡錐形細胞あるいは巨細胞が少なくとも腫瘍全体の10%を占めていなくてはならない。

※現在は多形癌という分類はありません。肉腫型癌(紡錘細胞癌、巨細胞癌、癌肉腫、肺芽腫)という組織型に変わりました。解説文は問題作成時の組織分類で解説をしました。

 

呼吸器 問5.肺扁平上皮癌について正しいものはどれですか.

A.非角化型の核質は微細顆粒状である.

B.細胞相互封入所見が見られることは稀である.

C.ゴースト細胞では核クロマチンは微細顆粒状である.

D.角化型の核は,大小不同が著しく核縁は不均等に肥厚する.

E.核クロマチンは粗顆粒状の他にしばしば濃縮状を呈する.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

肺扁平上皮癌・・・肺癌の中で2番目に多い。50歳以上、喫煙がリスク。

 

扁平上皮癌の細胞像

・背景に壊死

・カニバリズム

・大小不同、核形不正

・核縁の肥厚

・クロマチンは粗顆粒状、

・LG好性の細胞質を持つ細胞、層状構造が見られる

 

呼吸器 問6.原発性肺腺癌の細胞で陰性となることの多い抗体はどれですか.

A.Napsin A

B.CK 7

C.CDX

D.CK 20

E.TTF – 1

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

肺腺癌の免疫染色・・・腺癌のマーカーとしてTTF-1, Napsin A、CK7が陽性となる。また,PAS染色やmucicarmine染色などの粘液染色も腺癌のマーカーとして有用である.

 

呼吸器 問7.転移性肺腫瘍について正しいものはどれですか

A.大腸癌の肺転移はしばしば壊死が目立つ.

B.最も頻度が高いのはリンパ行性転移である.

C.CK 5/6 を用いて肺癌と転移性肺腫瘍を鑑別出来る.

D.p 40 を用いて肺癌と転移性肺腫瘍を鑑別出来る.

E.肺リンパ管症は胃癌,乳癌に多い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

肺に転移する癌・・・結腸、大腸、乳腺、腎臓、子宮、頭頸部、膀胱、胃、食道、肝臓、膵臓、卵巣、骨軟部の悪性腫瘍など。ほとんどが血行性転移。

CK5/6・・・重層上皮の基底層、中間層、表層、移行上皮、混合腺、中皮細胞、中皮腫などで発現。

p40・・・扁平上皮癌のマーカー。扁平上皮癌のみに陽性。

肺リンパ管症・・・肺の細いリンパ管やリンパ節に癌細胞がつまってしまったり、転移によりリンパの流れが悪くなってしまう。胃癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌で多く見られる。

 

呼吸器 問8.肺サーファクタントについて誤っているものはどれですか

A.おもにリン脂質からなる.

B.生後より分泌が開始される.

C.肺胞の表面張力を維持させるためのものである.

D.未熟な肺ではサーファクタントが欠乏している.

E.サーファクタントはⅡ型肺胞上皮でつくられる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

肺サーファクタント・・・生体界面活性剤、肺胞の表面張力を減少させるもの。Ⅱ型肺胞上皮が産生し、胎生34週より分泌開始。90%のリン脂質、10%のタンパク質よりなる。未熟な肺では欠損している。胎児肺の成熟度指数としてレシチン/スフィンゴミエリン比を測定。

 

呼吸器 問9.ニューモシスチス肺炎の組織像として,誤っているものはどれですか.

A.肺胞腔内の好酸性,無細胞性物質

B.肺胞腔内の泡沫状滲出物

C.肺胞腔内のコレステロール・クレフト

D.肺胞腔内の好中球浸潤

E.肺胞中隔のリンパ球,形質細胞浸潤

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

ニューモシスチス肺炎・・・急性期はびまん性肺胞障害の像を取る。肺胞隔壁は線維性に肥厚し、肉芽組織形成をみる。肺胞内に好酸性の無構造物質、泡沫状の滲出物が見られる。炎症細胞は形質細胞、リンパ球の浸潤が見られる。

コレステロールクレフト・・・コレステロール結晶が標本処理中に溶解した跡。

 

呼吸器 問10.気管支擦過細胞診で線毛円柱上皮に混在して核クロマチンの増量した結合性の強い細胞集塊が認められた, 細胞質も観察され,核の異型も乏しかった.最も考えられる細胞はどれですか.

1.リンパ球

2.小細胞癌

3.扁平上皮癌

4.基底細胞増生

5.軽度異型扁平上皮細胞

解説

回答:4

・結合性が高い点から考えると、リンパ球は考えにくい。核異型が乏しい点から小細胞癌、扁平上皮癌、軽度異型扁平上皮癌は考えにくい。よって基底細胞増生が考えられる。高度な炎症が起こった場合、基底細胞増生が起き、その際は線毛円柱上皮も集塊となって現れることがある。

 

第47回 呼吸器 問1~問10の解説は以上です。