平成28年第49回

【解答(体腔液編)】平成28年第49回細胞検査士試験過去問の解説(問11-20)

こんにちは!

あすはやです。

平成28年度 第49回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は体腔液・尿・その他 問11~問20の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

(問11~問20)

問11.ユーイング肉腫について正しいものを1つ選びなさい.

1.紡錐形細胞から構成される.

2.細胞質内にグリコーゲンを含む.

3.高齢者での発生頻度が高い.

4.骨または類骨を形成する.

5.横紋筋肉腫との鑑別は容易である.

解説

回答:2

・ユーイング肉腫・・・10~30歳に発生し、男性に多い。大腿骨、脛骨、上腕骨、骨盤などに好発する。組織学的にはN/C比の高い小円形細胞からなる。リンパ球大の小型の均一な類円形細胞が孤立散在性に出現する。まれにロゼット状配列を示す集塊や、不規則細胞集塊で出現する場合がある。孤立散在性細胞のみの場合は、悪性リンパ腫との鑑別に苦慮することがある。その鑑別にはPAS反応が有効であり、ジアスターゼ消化により焼失するグリコーゲンを細胞質内に多量に含んでいる。本腫瘍は、小円形細胞肉腫の代表例である。

 

問 12.正しいものを1つ選びなさい.

1.尿路結石患者の尿中には,アンブレラ細胞は認めない.

2.尿路に発生する扁平上皮癌は低分化型が多い.

3.マラコプラキアでは,カルシウム鉄を含有した組織球の出現が特徴である.

4.尿中に出現する腺癌細胞は,ほとんどが膀胱原発である.

5.尿路上皮乳頭腫は悪性転化する.

解説

回答:3

尿路結石症・・・結石の部位により出現する細胞が異なる。腎盂、尿管結石では赤血球以外の細胞成分は乏しいことが多い。濃染核や腫大核小体を有する異型細胞の混在をみることがある。膀胱結石では、赤血球以外にアンブレラ細胞を含む多数の尿路上皮細胞が出現する。アンブレラ細胞は大型化、多核化していることが多い。深層部の移行上皮細胞は細胞集塊として出現することが多く、乳頭状腫瘍と鑑別を要することがある。

尿の扁平上皮癌・・・膀胱原発扁平上皮癌は他臓器の扁平上皮癌細胞に類似する。原発の場合は角化型扁平上皮癌の出現をみることが多い。角化を示す癌細胞をみる場合には扁平上皮癌と判定することは容易である。角化を示さない場合には尿路上皮癌との鑑別が難しい場合が少なくない。また、尿路上皮癌細胞をみた場合には、女性では子宮頸部扁平上皮癌の混入や膀胱浸潤の可能性もある。

マラコプラキア・・・膀胱の肉芽腫性炎である。ミカエリス・グットマン小体と呼ばれる多核のマクロファージの細胞質内封入体が特徴である。石灰と鉄からなる同心円状の封入体で、ヘマトキシリンに好染する。尿検体への出現はまれ。

尿の腺癌・・・膀胱腺癌は通常型と特殊型に分けられる。これらの腺癌のなかで粘液産生を示すものがあり、粘液性の尿を示す場合がある。また、細胞像としては膀胱周囲臓器に発生する腺癌に類似するため、膀胱原発か他臓器の浸潤か細胞像だけで判断するのが難しい場合が多い。転移性腺癌は前立腺癌、子宮体癌、大腸癌の直接浸潤が多く、いずれも膀胱原発癌より高頻度である。播種は胃癌、卵巣癌。特に胃の印環細胞癌が多い。通常型では比較的背の高い円柱状の癌細胞が腺腔様の細胞配列を示す細胞集塊としてみられる場合や、細胞質に粘液を有する腫瘍細胞をみる場合がある。特殊型には尿膜管癌、印環細胞癌、明細胞癌があり、尿膜管癌は結腸癌に類似し、印環細胞癌は胃癌に代表される印環細胞癌の癌細胞をみる。また明細胞腺癌では卵巣の明細胞腺癌に類似した像をみる。

尿路上皮乳頭腫・・・頻度は膀胱腫瘍全体に対して数%以下。好発部位は膀胱三角部、尿管口部で再発が多い。多発する事が多いので、その場合は膀胱乳頭腫症(papillomatosis)と呼ばれる。再発を繰り返すうちに悪性化し移行上皮癌の病像を示すようになる事がある。

問 13.小児に多くみられる脳腫瘍を1つ選びなさい.

1.退形成性星細胞腫

2.乏突起膠腫

3.髄芽腫

4.髄膜腫

5.血管芽腫

解説

回答:3

退形成性星細胞腫・・・原発性脳腫瘍の4.8%、全神経膠腫の19%を占める。小児の原発性脳腫瘍の5.7%である.diffuse astrocytomaに比較して発生年齢が高く、45~60歳代にピークがある。またglioblastomaよりは平均で5~10歳程度若い年齢層に発生する。やや男性に多い。

※星細胞腫の悪性度が上がったもの。星細胞腫は悪性度が増すにつれ、好発年齢も増していくようだよ。

乏突起膠腫・・・中年成人の大脳、特に前頭葉に好発。特徴的な細胞像は目玉焼き像とよばれる蜂の巣構造。この現象は固定と脱水による人工産物であり、迅速診断時の凍結切片ではみられない。

髄芽腫・・・小児期に発生し、男性に多い。小脳虫部の下半分に好発し、第4脳室に突出した腫瘤を作る。年長児では小脳半球にもみられる。多数の核分裂像とアポトーシスが認められる。Homer Wrightロゼットは花冠状に並んだ腫瘍細胞がその突起を中心に向かって伸ばす構造で、本腫瘍ではときに認められる。

髄膜腫・・・中高年齢者に発生することが多く特に女性での発生例が男性に比べ約2倍高い。稀に小児に発生することもある。多くは硬膜内で髄外性に発育し、大脳円蓋部、傍矢状部、蝶形骨縁、トルコ鞍周辺に位置していることが多い。特徴的な渦巻き状構造、砂粒体の形成、核内偽封入体がみられる。免染でEMAが陽性。

血管芽腫・・・成人に発生する腫瘍で、散発例とVHL合併例があり、後者は若年発症を示す。テント下特に小脳に発生するが、VHL患者では脳幹、脊髄に多発性病巣を認めることがある。予後良好な良性腫瘍。

 

問 14.浸潤性乳管癌の悪性度に関連する指標として,誤っているものを1つ選びなさい.

14.浸潤性乳管癌の悪性度に関連する指標として,誤っているものを1つ選びなさい.

1.Ki-67(MIB-1)標識率

2.核異型スコア

3.核分裂スコア

4.Cytokeratin 20

5.HER2-FISH

解説

回答:4

CK20・・・抗サイトケラチン20抗体は、正常細胞では消化管小窩上皮、腸管上皮、胃幽門上部の内分泌細胞、移行上皮、Merkel細胞に発現されている。悪性細胞では、胃癌・大腸癌・直腸癌・膵癌・胆道系癌・卵巣粘液性癌・移行上皮癌・Merkel細胞癌に発現を見る。また、大腸癌・直腸癌では高発現するのに対し胃癌では発現率が低くなることも知られている。一方で、扁平上皮癌・乳癌・肺癌・子宮癌・卵巣非粘液性癌・小細胞癌には発現を認めない。

問 15.誤っているものを1つ選びなさい.

1.乳管腺腫では異型を伴ったアポクリン化生細胞が出現することがある.

2.Mucocele-like-lesion はマンモグラフィーでは石灰化病変として指摘される.

3.乳頭部腺腫は腫瘍の発生場所が細胞診断の助けとなる.

4.乳管過形成では癌に比して均一性に乏しい細胞所見を呈する.

5.肝硬変による肝機能の低下は女性化乳房の一因となる.

解説

回答:不適切問題。すべて正解。

乳管腺腫・・・乳管内発生の良性上皮細胞増殖性病変であり、病変の中心部に瘢痕状の繊維化を伴うことがある。病巣が乳管外へ浸潤性に広がることや、細胞異型を伴ったアポクリン化生がみられることがある。画像診断、組織診断、細胞診断ともに癌と鑑別が必要になる。乳管上皮が細胞集塊で出現している場合は乳管上皮に二相性が確認できる。乳管上皮細胞に通常細胞異型は目立たない。

Mucocele-like-lesion・・・多房性の粘液を含む嚢胞の集簇からなる病変。周囲間質への粘液の漏出を伴なうことが特徴。好発年齢20歳代~40歳代、閉経前に圧倒的に多い。マンモグラフィーでは石灰化病変として描出される。癌も石灰化病変として認められるため、注意が必要。

乳頭部腺腫・・・乳頭直下に発生する特異な病変である。血性乳頭分泌物を呈する場合が多く、乳輪下腫瘤、乳頭部腫大、びらん、潰瘍を形成することがあり、臨床的にPaget病との鑑別が問題になることがある。組織学的には、上皮の乳頭状増殖、充実性増殖とこれらの硬化性変化を伴う複合病変であり、癌と鑑別が必要な場合もある。穿刺材料では多量の細胞が採取される場合がある。筋上皮細胞を確認し難い場合があり、良悪の判定に苦渋することもある。腫瘍の発生場所を考慮した判断が必要である。

乳管過形成・・・重積した集塊状の出現を示す。集塊を構成する細胞は異型に乏しく不揃いで方向性は不均一である。ときに細胞密度が高くなり、篩状構造や微小乳頭状構造を認めるが、癌に比較すると均一性に乏しく篩状構造も不完全。

女性化乳房・・・高齢男性に多く、エストロゲン過剰に起因すると考えられている。肝硬変症で肝臓におけるエストロゲン不活化不良に起因することもある。線維腺腫や乳腺症に類似した細胞像を示すことが多い。

問 16.胸膜悪性中皮腫について誤っているものを1つ選びなさい.

16.胸膜悪性中皮腫について誤っているものを1つ選びなさい.

1.壁側胸膜より発生する.

2.胸水貯留による呼吸困難が初期症状であることが多い.

3.早期の段階からリンパ行性に肺実質に転移することが多い.

4.多くの症例で p 16 遺伝子を含む 9 番染色体短腕の欠失が認められる.

5.アスベストによる健康被害の救済給付対象となる指定疾病の一つである.

解説

回答:3

胸膜悪性中皮腫・・・肺は胸膜という膜に包まれている。この膜の表面を覆っているのが中皮であり、中皮細胞のがん化により生じるのが悪性胸膜中皮腫。胸膜は二重の膜となっており、外側の胸壁を覆っている膜を壁側胸膜、内側の肺を覆っている膜を臓側胸膜と呼ぶ。壁側胸膜の中皮細胞から発生した悪性胸膜中皮腫は、臓側胸膜に進展し、さらに近傍の組織やリンパ節、他の臓器に進展、転移していく。悪性中皮腫は胸膜のほかに心膜、腹膜、精巣鞘膜にも発生することがあるが、胸膜から発生する悪性中皮腫が最も多い。男女では男性に多く、アスベストが発症の原因として明らかになっている。アスベストに暴露してから悪性中皮腫の発症までには40年程度かかると言われており、比較的最近までアスベストを大量に消費してきた本邦では今後、ますます患者数が増加することが予想されている。

症状・・・最も多く見られる症状は胸痛・背部痛、呼吸困難であり、発熱や咳などの症状も認められる。また、まったく症状が認められない場合もあり、健康診断で胸に水が貯まっていることを指摘され始めて病気の存在に気がつくこともある。

検査と診断・・・アスベスト暴露歴の聞き取り調査、胸部画像検査、胸水検査(ヒアルロン酸・細胞診)、病理組織検査など。

病期

Ⅰa期 :壁側胸膜に限局しており、臓側胸膜には腫瘍を認めない。

Ⅰb期 :壁側胸膜から臓側胸膜に腫瘍が散らばる

Ⅱ期 :胸膜のほか肺へ腫瘍が広がる。または胸膜全体に広がる。

Ⅲ期 :切除可能な範囲で胸壁や縦隔脂肪織などへ広がる。

Ⅳ期 :横隔膜や縦隔臓器や反対側の胸膜などへ広がり、遠隔の臓器や組織に広がる。

遺伝子異常・・・1994 年、Cheng 等によって中皮腫におけるp16遺伝子を含む染色体9p21領域のホモ欠失(2本の相同染色体上の両方が欠失する)が報告された。以来、多くの研究者らによって、中皮腫における様々な割合でのp16遺伝子のホモ欠失と、組織や細胞診標本を用いたFISH法の中皮腫診断への有用性が報告されている。特筆すべきは我々の研究結果も含めて、未だに反応性中皮細胞過形成症例においては、欠失が認められない点、即ち特異度が 100%であり、中皮腫と反応性病変との鑑別において非常に有効な 診断ツールとなり得るということである。

問 17.腹膜偽粘液腫について誤っているものを1つ選びなさい.

1.異型に乏しい細胞が出現する.

2.背景の粘液は PAS 反応陽性,Alcian blue 陰性である.

3.予後不良の疾患である.

4.虫垂の粘液嚢胞破綻が原因となる.

5.卵巣の粘液性嚢胞腺腫の破綻が原因となる.

解説

回答:2

腹膜偽粘液腫・・・卵巣、虫垂などの粘液性腺腫や高分化型腺癌が腹腔内に播種し増殖したものと考えられる病変。腫瘍細胞によって産生された粘液が充満した状態をいう。良性腫瘍に起因する場合も臨床的には悪性とされている。(粘液を採っても採ってもどんどん産生されてしまうんだよ)検体は寒天状の粘液であり細い針では吸引できない。また、採取された検体も遠心沈殿による集細胞ができないため、直接サンプリングし塗抹標本が作製される。従って、標本上の腫瘍細胞数が少ない場合や粘液だけでは腫瘍細胞が見いだせない場合もある。腫瘍細胞は粘液に浮遊した状態でみられる。細胞異型は腺腫や高分化型腺癌に由来するため比較的軽度。多くは円柱状の腫瘍細胞がシート状に出現したり、乳頭状ないし球状の細胞集塊として出現する。背景や腫瘍細胞にみられる粘液は粘液染色で強陽性を示す。つまりPAS反応、アルシアン青染色、ムチカルミン染色に染まる。

問 18.次のうち誤っているものを1つ選びなさい.

1.膀胱癌は男性に多い.

2.糸球体腎炎では尿中に尿細管上皮細胞が出現することがある.

3.Bellini 管癌は集合管上皮由来である.

4.膀胱内注入療法に BCG は用いられない.

5.ビルハルツ住血吸虫感染は膀胱癌を引き起こすことがある.

解説

回答:4

膀胱癌・・・膀胱から発生する上皮性悪性腫瘍。第9染色体長腕ヘテロ接合性の消失、第17染色体短腕ヘテロ接合性消失が関与するタイプも指摘されている。発癌の危険因子としては、不衛生な環境、化学物質、ビルハルツ住血吸虫による感染症、喫煙、などが指摘されている。発生率は男性が女性の3倍多い。70歳代での発症が多く、50歳以下の若年発症はまれ。

糸球体腎炎

確証となる文献が見つからないため、以下尿沈渣での話を参考までにして下さい。

糸球体腎炎を疑う場合

①変形赤血球や赤血球円柱を認めるとき

②蛋白尿を認めるとき

変形赤血球とはコブ状、断片状、ねじれ状、標的状など多彩な形態を示し、大小不同が認められる場合(特にコブ状は少数でも有意といわれる)。ちなみに円盤状やゴースト状、金平糖状などの形態を示しているが、大小不同がなく単調なものを均一赤血球といい、非糸球体性を示唆する。糸球体性血尿は、組織学的にはメサンギウム病変と相関するといわれている。肉眼的血尿を認める糸球体疾患としては、溶連菌感染後糸球体腎炎とIgA腎症が主である。

尿細管上皮細胞・・・尿細管上皮細胞は、近位尿細管からヘンレの係蹄、遠位尿細管、 集合管、腎乳頭までの内腔を覆う上皮に由来している。 尿沈渣中に尿細管上皮細胞が出現するということは、急性・慢性 を問わず尿細管に何らかの障害が起こり、障害された尿細管上皮が 尿細管基底膜から剥離・脱落し、尿中に出現したことを意味する。尿沈渣中に尿細管上皮細胞が多数出現する場合には、急性尿細管壊死や慢性経過を示す腎実質由来の疾患などが考えられる。

集合管癌(ベリニ管癌)・・・集合管癌は腎実質由来の上皮性悪性腫瘍で、発生頻度は全腎癌の0.4%から1.8%とされる稀な腫瘍である。発生母地は集合管(ベリニ管)で、本邦の検討では疾患特異的5年生存率は34.3%とされ、尿細管上皮を発生母地とする通常の腎細胞癌に比べ予後不良である。

BCG膀胱腔内注入療法・・・ウシ型結核菌より得られた結核予防ワクチンを用いて、表在性膀胱癌の治療あるいは腔内再発の予防に用いる。この療法後の尿細胞診では、しばしばラングハンス型巨細胞や類上皮細胞をみる。

 

問 19.泌尿器細胞診について誤っているものを 1 つ選びなさい.

1.新鮮な尿から出来るだけ多くの細胞を集める.

2.膀胱鏡の発達によって膀胱洗浄液は減少している.

3.カテーテル尿は多くの細胞を採取できる.

4.回腸導管尿は変性した多数の扁平上皮細胞がみられる.

5.Decoy cell は悪性細胞との鑑別が必要である.

解説

回答:4

自然尿の検体処理・・・早朝尿は膀胱内の停留時間が長く細胞の変性が強いため、起床時の尿は細胞診には不適切であり、早朝排尿後3~4時間程度経過してからの尿が検体として適している。自然尿は採取後、検体処理することが重要であるが、処理が直ちにできない場合には細胞保存液を使用して、採取翌日の検体処理が可能である。遠沈は1500回転で5分間おおない、上清を十分除去した後に沈査を塗抹する。この際、尿は全量用いることが重要である。

膀胱洗浄液・・・排尿後、膀胱内にカテーテルを挿入し、50ml程度の生理食塩水で数回ポンピングしてから回収し、集細胞法で標本を作製する。機械的なポンピング操作により、新鮮な細胞が剥離されるので、細胞が多量に得られること、採取細胞が変性していない新鮮な細胞である特徴である。

膀胱鏡検査・・・内視鏡で膀胱あるいは尿道の中を観察する検査。軟らかく刺激の比較的少ない軟性膀胱鏡と、より視野が広く使い勝手がよい硬性膀胱鏡がある。超音波検査やレントゲン検査では見つけることができない、非常に小さい病変でも見つけることが可能。膀胱癌に対する最も重要な検査。ほかに膀胱結石や尿道狭窄等の診断に用いられる。

※膀胱癌の診断において、最も確実性の高い検査は膀胱鏡。内視鏡を尿道から膀胱内に挿入し、膀胱内を観察する。しかし、平坦な腫瘍(上皮内癌)では、発赤のみで認められることが多く、尿細胞診の結果を含め総合的に判断する必要。尿細胞診は負担の少ない検査だが、膀胱癌があっても尿中に癌細胞が出なければ異常がみつからない。

回腸導入尿・・・膀胱全摘出後に尿路を確保するために、尿管・回腸吻合が行われ、代用膀胱に貯留した尿が細胞診の対象となることがある。しかし、代用膀胱内では変性した腸上皮や食物残査が多数存在し、異型細胞と誤認されることがあるので注意が必要。尿は特徴的な粘稠性を示す。これは回腸上皮の杯細胞より分泌される粘液が混じることによる。良性の細胞成分として回腸由来の円柱上皮細胞がみられることがあるが、多くは核濃縮、核崩壊、細胞質内好酸性封入物などのいわゆる細胞の変性所見を示す。非細胞性成分として、無晶性リン酸塩、リン酸アンモニウムマグネシウムの粗大結晶がみられる。また、感染によって細菌、真菌がみられることが少なくない。

Decoy cell・・・由来ははっきりしないがウイルス感染に起因するといわれている細胞で、特発性腎出血でも出現をみることがある。細胞は小型で核濃縮を有する。時に悪性細胞と鑑別を有することがある。出現細胞数は少なく出現が一過性のため数回検査を繰り返すことによって悪性を否定することができる。

問20.Schwann 細胞腫について誤っているものを 1 つ選びなさい.

1.神経鞘細胞由来の腫瘍である.

2.良性腫瘍である.

3.全脳腫瘍の約 10%を占める.

4.頭蓋内発生では,女性に多い.

5.聴神経鞘腫は,第 9 脳神経から発生する.

解説

回答:5

頭蓋内腫瘍全体の8~10%、脊髄腫瘍中では最も高頻度(約30%)にみられ、20~50歳の成人に多い。女性の方が男性より多い傾向あり。脳神経では聴神経束(第8脳神経)に好発し、小脳橋角部腫瘍と呼ばれる。脊髄では神経後根に発生しやすい。組織学的には腫瘍は結合組織性被膜で覆われており、内部では長紡錘形の細胞が線維束を作り、波状に走って交錯している。しばしば各が並列し、柵状配列を示している。通常、細胞の配列が密な部分(Antoni-A型)に加えて細胞が疎に乖離して、細胞間基質が浮腫状を呈している部分(Antoni-B型)を伴うことが多い。

第49回 体腔液・尿・その他 問11~問20の解説は以上です。