平成26年第47回

【解答(消化器編)】平成26年第47回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)

こんにちは!

あすはやです。

平成26年度 第47回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は消化器 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

消化器(問1~問10)

消化器 問1.口腔領域疾患について正しいものはどれですか.

A.ヘルペスウイルス感染は口腔癌のリスクファクターである.

B.白板症では基底細胞が高頻度に出現する.

C.苔癬では強い炎症性背景を伴う.

D.腫瘍の大半が舌から発生する扁平上皮癌である.

E.扁平上皮癌は低分化型が多い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

単純ヘルペス・・・HSV(Herpes simple virus)の感染により発症する。口唇ヘルペスは、HSV-1型による。再発性ヘルペスのうち最も高い。小水庖、びらん、疼痛ののち約一週間で痂疲を生じて治癒する。

帯状ヘルペス・・・HZV(Herpes zoster virus)による感染で発症する。好んで神経節、神経節とその支配領域の皮膚・神経が侵される。口腔では三叉神経・第Ⅰ枝(前頭部・上瞼)に好発し、第Ⅱ、第Ⅲ枝(口腔、舌、頬粘膜)を侵す。

口腔癌・・・原因として、たばこ、アルコール、鉄欠乏、口腔内の不衛生などが上げられる。その他HPV感染との関係も考えられている。

白板症・・・肉眼的に平坦ないし軽度隆起する白色の病変。角化の亢進と錯角化を伴う扁平上皮の肥厚、増生。無核の扁平上皮細胞、小型でオレンジ好性の錯角化細胞の出現。

扁平上皮癌・・・高分化型が多い。

 

消化器 問2.口腔病変の細胞像の特徴について正しい組み合わせはどれですか.

A.歯根嚢胞 ――――――― 導管上皮と筋上皮

B.扁平上皮乳頭腫 ―――― 異角化細胞

C.エナメル上皮腫 ―――― 棘細胞と円柱状細胞

D.悪性黒色腫 ―――――― Giemsa 染色で異染性(緑色)顆粒

E.疣贅性癌 ――――――― コイロサイトーシス

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

歯根嚢胞・・・根尖部歯周組織の炎症性病変に続発して発生する。顎骨内嚢胞の45%~60%と最も頻度が高い。上顎多く、20~30代に好発。組織像は嚢胞壁内層は非角化性重層扁平上皮に裏打ちされ、炎症の程度により不規則に増殖。嚢胞内に血液、コレステリン針状結晶や炎症細胞を含む液体。

画像あります。こちらのサイトを参考にして下さい。↓

http://www.jsop.or.jp/atlas/chapter5/html5/5_2a_003.html

 

扁平上皮乳頭腫・・・口腔粘膜に好発する良性上皮性腫瘍。HPVとの関連性あり。組織像は扁平上皮の乳頭状増殖、基底細胞の重積、有棘層の肥厚、上皮乳頭部は毛細血管の豊富な樹枝状間質化、ウィルス感染時には核周囲に空胞変性。

画像あります。こちらのサイトを参考にして下さい。↓

http://www2.dent.nihon-u.ac.jp/OralPathologyAtlas/Ver1/chapter4/html4/4_3a_002.html

疣贅性癌 ・・・扁平上皮癌の亜型。高分化角化重層扁平上皮の著明な外向性増殖と上皮下への局所破壊性、圧排性増殖を示す低悪性度癌。細胞像の主体は表層型、核の増大や大小不同、クロマチン増、核形不整、オレンジG好性で著明な核化を程する。

 

消化器 問3.唾液腺腫瘍について正しいものはどれですか.

A.オンコサイトーマはリンパ球性間質を伴う.

B.基底細胞腺腫は細胞集塊が基底膜様物質に縁取られている.

C.粘表皮癌は粘液産生細胞,扁平上皮細胞,中間型細胞で構成される.

D.腺房細胞癌では壊死を伴うことが多い.

E.腺様嚢胞癌では大型でクロマチンの増量した細胞が見られる

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

 

解説

回答:3

オンコサイトーマ・・・好酸性顆粒の細胞質を有する大型上皮細胞が単一に出現。リンパ球の混在は認めてもわずかである。

腺房細胞癌・・・出血性及び泡沫細胞を背景に弱い結合性を示し、淡いライトグリーン好性の細顆粒状物質を示す細胞集塊。PAS(+)Alcian blue(-)。ときに毛細血管が付着してみられたり、psammoma bodyを見ることがある。核は異型が乏しく、やや腫大傾向がある。核小体の出現がみられ、また背景に腫瘍細胞の核が散在して裸核状に見られる。核分裂像はほとんど見られない。

腺様嚢胞癌・・・軽度壊死性背景に篩・管状配列のボール状細胞集塊を示し、しばしば中に粘液様および硝子様物質をみる。硝子様物質PAS(+)Alucian blue(+)、メイ・ギムザ染色でメタクロマジーが見られる。細胞境界は不明瞭、核異型は乏しく、楕円から短紡錘形でクロマチンは濃染し、核小体の出現をみる。

 

消化器 問4.食道疾患について正しいものはどれですか.

A.胃食道逆流症はバレット食道の原因となる.

B.顆粒細胞腫は角化傾向を示す.

C.リンパ節転移のある食道癌は進行癌と定義される.

D.Epstein-Barr(EB)ウイルス感染は乳頭腫の原因となる.

E.異所性胃粘膜は腺癌の発生母地となる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

顆粒細胞腫・・・食道下部に好発する神経原性腫瘍。食道良性腫瘍の1~2%を占める。若年にも生じ、女性に多い。組織像は好酸性顆粒状の豊かな細胞質を有する腫瘍細胞が胞巣状あるいは充実性に増生。

早期食道癌・・・原発巣の壁深達度が粘膜層に留まり、リンパ節転移を認めない食道癌と定義されている。

進行癌の定義・・・壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の3つから総合的に判断する。リンパ節転移してなくても深達度や転移があれば進行癌となる。

EBウィルス・・・キスや唾液を介した感染、濃厚接触による飛沫感染。かぜ症状、血球貪食症候群、悪性リンパ腫、上咽頭癌の原因となる。乳頭腫の原因ウィルスではない。

 

 

消化器 問5.消化器細胞診検体で感染症法に基づく届出が必要な病原体はどれですか.

A.カンジダ

B.ヘルペス

C.ジアルジア(ランブル鞭毛虫)

D.アメーバ赤痢

E.肝吸虫

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

1類感染症・・・エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マール・ブルグ病、ラッサ熱。

2類感染症・・・急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、SARS、中東呼吸器症候群、鳥インフルエンザ

3類感染症・・・コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス

4類感染症・・・ウエストナイル熱、E型肝炎、A型肝炎、エキノコックス症など

5類感染症・・・アメーバ赤痢、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)、梅毒、後天性免疫不全症候群

※2019年5月7日時点での情報です。

こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html#list01

消化器 問6.肝胆膵疾患において正しいものはどれですか.

A.肝内胆管癌の多くは肝硬変症を合併している.

B.肝外胆管癌は十二指腸乳頭部癌より予後が良好である.

C.胆嚢癌における術中腹腔洗浄細胞診陽性は遠隔転移ありと判定される.

D.胆管拡張を伴わない膵・胆管合流異常症は胆嚢癌の危険因子である.

E.糖尿病は膵癌の危険因子である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

肝内胆管癌・・・肝細胞癌のような性差はなく、男女性差なし、同頻度に発生する。好発年齢は60~70歳代、肝硬変を合併することは少ない。組織学的には腺癌である。

肝外胆管癌・・・ほとんどが腺癌で胆嚢癌と同様に内成長性増殖するか、あるいはびまん性に浸潤する。予後は不良。胆嚢癌よりは転帰は多少は良い。

ファーター膨大部の腺癌・・・胆管癌とは対照的に、この癌の外科的治療による5年生存率は35%に達している。

胆嚢癌の腹腔洗浄細胞診・・・陽性の場合、胃癌だと遠隔転移ありになるが、胆嚢癌では今のところ転移の判断材料とされていない。

消化器 問7.胆嚢について正しいものはどれですか.

A.固有筋層に相当する部分は線維筋層と呼ばれる.

B.上皮は単層円柱上皮からなる.

C.広基性のポリープは癌の頻度が高い.

D.コレステロールポリープは粘膜固有層にリンパ球の集簇をみとめる.

E.胆嚢癌は閉塞性黄疸で発見されることが多い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

胆嚢では固有筋層、胆管では線維筋層と呼ばれている。

コレステロールポリープ・・・胆嚢ポリープの中でも最も頻度が高く、粘膜固有層内の泡沫状の組織球の限局性集積によりポリープ状に隆起する。

胆嚢癌・・・かなり進行するまで無症状のことが多く、症状があっても慢性胆嚢炎、あるいは合併している胆石によるものがほとんどである。

消化器 問8.膵腫瘍で女性に好発するものはどれですか

A.漿液性嚢胞腫瘍

B.Solid-pseudopapillary neoplasm

C.膵管内乳頭粘液性腫瘍

D.浸潤性膵管癌

E.膵芽腫

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)・・・高齢男性に好発。主膵管、大型分枝内。この病気になると”ドロッとした粘液”で膵管がふくらむため、腹痛が起こることがある。この腫瘍は膵管内にできた”ポリープ”の場所から大きく二つに分かれ、膵臓の背骨にあたる主膵管にできる場合で、もう一つは主膵管から分かれた分枝膵管にできる場合です。一般に主膵管にできたIPMNはがんであることが多く、分枝膵管のIPMNは、がんの一歩手前の腺腫か、がんでも腺腫に混じったがん”であることが多いといわれている。

浸潤性膵管癌・・・60歳以上の高齢者。30歳代の若年層にもまれに見られる。女性より男性に多い。若年層では有意に男性が多い。頭部に一番多く発生し(60%)、次いで体部(10%)、尾部(5%)の順である。

膵芽腫・・・小児に発症、男児に多い。肉眼的には充実性あるいは結節型の腫瘤として認められ、時に中心部が壊死に陥り、偽嚢胞を形成することもある。

消化器 問9.膵管内乳頭粘液性腫瘍について正しいものはどれですか.

A.浸潤癌も含まれる.

B.び漫性平坦状には増殖しない.

C.主膵管非拡張像はみられない.

D.好酸性の細胞が増殖することはない.

E.腸型と胃型の鑑別にMUC 2 免疫染色が有用である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

IPMN・・・肉眼形態には、限局性隆起性のものが多いか、びまん性平坦のものも存在する。主膵管の拡張が目立つ場合は、粘液高産生とし、主膵管の拡張がないかあっても軽度の場合は粘液非高産生とする。多くの分枝型は後者となる。また腸型、膵胆道型、胃型があり、好酸性細胞が増殖する好酸性細胞型もある。

消化器 問10.ワルチン腫瘍について誤っているものはどれですか.

A.顎下腺に最も多く発生する.

B.多形腺腫よりも発生頻度が低い.

C.肉眼的に境界明瞭である.

D.細胞診では背景にリンパ球が多い.

E.細胞診では壊死性背景を認めることはない.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

・ワルチン腫瘍・・・50歳以上の男性の耳下腺、顎下腺に好発し、特に耳下腺に多い。細胞像では、壊死性背景、多数のリンパ球、広い細胞質を有する好酸性上皮細胞集塊を認める。

多形腺腫・・・唾液腺腫瘍の中で最も頻度が高い腫瘍。

 

第47回 消化器 問1~問10の解説は以上です。