こんにちは!
あすはやです。
平成26年度 第47回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は胸腹水・その他 問1~問10の解説を行います。
学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!
Contents
胸腹水(問1~問10)
胸腹水 問1.浸潤性乳管癌の治療について,正しいものはどれですか.
A.HER 2 遺伝子検査の結果,Her 2 / CEP 17 シグナル比が1.0 であった場合ハーセプチンの投与対象となる.
B.HER 2 免疫染色の結果がスコア1 +の場合,ハーセプチンの投与対象となる.
C.手術術式は拡大乳房切断術が最も多い.
D.HER 2 スコア0,ER / PgR 免疫染色の結果がいずれも陰性の場合,化学療法が第一選択となる.
E.術中迅速でセンチネルリンパ節転移がある場合,腋窩リンパ節郭清を行う.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:5
2013年にガイドラインが変更されました!
HER2の評価(ICH)
スコア0:染色性が認められない。≦10%の腫瘍細胞に不完全で、かすかな染色が見られる場合。(陰性)
スコア1:>10%の腫瘍細胞にかすかな、かろうじて染色が認められる。(陰性)
スコア2:>10%の腫瘍細胞に不完全な、弱、中等度の全週性の膜染色が認められる。または≦10%の腫瘍細胞に完全な強い膜染色が認められる。(陽性)
スコア3:>10%の腫瘍細胞に強い完全な全周性の膜細胞が認められる。(陽性)
FUSH法(ISH)
陽性:HER2/CEP17比(或いはHER2/CEN17比)が2.0以上で陽性。また2.0未満でも、癌細胞あたり平27均HER2遺伝子コピー数が6.0以上のものがISH陽性と定義された。
equivocal:癌細胞あたり平均HER2遺伝子コピー数が4.0以上、6.0未満の場合はequivocalと定義された。equivocalとなったものはリフレックステスト(ICH)と同じ検体で代替えCh17プローブを用いたISH法、または新たな検査を実施しなければならない。
・乳癌の手術様式・・・近年では乳がんは、比較的初期の段階から,がん細胞の一部は全身に広がるという考え方が主流になり、乳がんが治るかどうかは,どれだけ広くがんを切除するかということよりも、手術をした時点で、目にみえないがん細胞が全身に残っているかどうかと、薬物療法でそれらを死滅させることができるかによって決まる、ということが知られるようになってきました。そのため,現在は必要以上に大きな手術を行うことはなくなりました。
胸腹水 問2.正しいものはどれですか.
A.バーキットリンパ腫はCD 10 陽性である.
B.形質細胞骨髄腫はCD 5 陽性である.
C.古典的ホジキンリンパ腫のホジキン細胞はCD 20 陽性である.
D.濾胞性リンパ腫では11 番染色体と14 番染色体の転座が認められるものが多い.
E.血管免疫芽球性T 細胞リンパ腫では淡明細胞が出現する.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
・形質細胞骨髄腫・・・CD138陽性
・ホジキンリンパ腫・・・陽性:CD30、CD15 陰性:CD79a、CD20
・濾胞性リンパ腫・・・陽性:CD79a、CD20、bcl-6、bcl-2、bcl-10
転座はIGH-BCL2である。
胸腹水 問3.膀胱内薬物注入療法(BCG 療法)による腫瘍細胞の変化(変性)はどれですか.
A.多核化
B.核の濃縮
C.細胞質の変性空胞
D.細胞質の角化
E.核小体の明瞭化
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:不明
尿路上皮癌の化学療法の変化では、細胞質や核の膨化、細胞質の空胞変性、核濃縮、クロマチンの凝集、細胞や核の融解が見られるため、BCG療法でも、おそらく似た反応が見られるのではないかと思われます。
胸腹水 問4.誤っているものはどれですか.
A.骨肉腫の好発年齢は10 歳代である.
B.骨肉腫の好発部位は骨幹端である.
C.軟骨肉腫では類円形の細胞が主体である.
D.軟骨肉腫の好発年齢は10 歳代である.
E.滑膜肉腫の組織像は単相性である.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:5
・軟骨肉腫・・・成人30~50代。好発部位は体幹の骨、骨幹端。細胞像は、核の肥大、2核化、核濃縮。PAS反応陽性、ALB陽性。
・滑膜肉腫・・・30~49歳。女性にやや多い。好発部位は下肢。細胞像は、紡錘形細胞の単層型、そして上皮様配列を示す類円形細胞混在の2相型がある。
胸腹水 問5.誤っているものはどれですか.
A.Pilocytic astrocytoma はRosenthal fiber の出現が特徴である.
B.Oligodendroglioma はchickin wire 様の血管網が特徴である.
C.Astrocytoma は核周囲の明庭が特徴である.
D.Meningioma には遺伝子異常はみられない.
E.AIDS 患者の中枢神経原発のリンパ腫はEpstein-Barr ウイルスによって 誘発される.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:4
・星細胞腫Astrocytoma ・・・好発部位:成人の大脳、小児の小脳半球、脳幹。細胞像は細胞質突起に富む、星細胞の形態を模倣。
・髄膜腫Meningioma ・・・中年もしくは、それ以降になる。好発部位:大脳鎌、傍尖状部、大脳円蓋部。NF2遺伝子に変異がある患者に多い。その他にも欠損が確認されている。
。胸腹水 問6.体腔液細胞診で誤っているものはどれですか.
A.遺伝子検査の対象となる.
B.癌の早期発見に有用である.
C.濾出液には腫瘍細胞が多く含まれる.
D.患者の体位変換後に採取するとよい.
E.腹腔洗浄細胞診は胃癌の進行度分類に関与する.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:3
・体腔液細胞診・・・悪性細胞の有無をみているため、早期発見のためではない。
・滲出液と濾出液・・・滲出液は炎症の滲出によって貯留したもの。細胞成分、蛋白量が多い。濾出液は循環障害による、うっ血、浮腫のため濾出したもの。
胸腹水 問7.誤っているものはどれですか.
A.乳管癌と小葉癌の鑑別にCD 10 染色が有用である.
B.非浸潤性乳管癌と浸潤性乳管癌の鑑別にp 63 染色が有用である.
C.筋上皮細胞は乳管内乳頭腫と非浸潤性乳管癌の鑑別に有用ではない.
D.石灰化は乳腺の良性病変でも認められることがある.
E.乳腺線維腺腫は閉経後の女性に好発する.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
・乳管癌と小葉癌の鑑別・・・E-cadherinが有効。
・非浸潤性乳管癌と浸潤性乳管癌の鑑別・・・鑑別は難しいが、筋上皮を目的とした免染を行う。α-SMA,Myosin,Calponinなど。サイトケラチン系も使用することもある。
胸腹水 問8.誤っているものはどれですか.
A.日本人の悪性リンパ腫の中で最も多い組織型は,びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)である.
B.バーキットリンパ腫の腫瘍細胞は多核のものが多い.
C.ホジキンリンパ腫はリンパ節外に発生することが多い.
D.組織球性壊死性リンパ節炎(菊池・藤本病)では大型の異型を伴う
E リンパ球が見られる伝染性単核球症はEpstein-Barr ウイルス感染症である
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:3
・バーキットリンパ腫・・・Starry sky像が特徴。
・ホジキンリンパ腫・・・全身のリンパ節が腫大する節内病変。主に縦隔、腋窩、腹部大動脈領域のリンパ節、脾臓。
胸腹水 問9.誤っているものはどれですか.
A.急性前骨髄性白血病は播種性血管内凝固を合併しにくい.
B.アウエル小体が複数の束になっているものをファゴット細胞という.
C.急性前骨髄性白血病は融合遺伝子PML / RAR αが確認される.
D.慢性骨髄性白血病の臨床像は慢性期,移行期,急性転化の3 病期に分けられる.
E.慢性骨髄性白血病はETV 6 – NTRK 3 融合遺伝子と関連している.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
・急性前骨髄性白血病・・・血液を凝固させるトロンボプラスチンに似て物質を大量の持つためには癌化した細胞が破壊されるたびに、この物質が血中に流れだし、DICを伴う。
・慢性骨髄性白血病・・・T(9;22),BCR/ABL融合遺伝子。フィラデルフィア染色体。
※ETV 6 – NTRK 3 融合遺伝子は、腎腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫で見られる。
胸腹水 問10.T 細胞系造血器腫瘍はどれですか.
1.濾胞性リンパ腫
2.マントル細胞リンパ腫
3.有毛細胞白血病
4.菌状息肉症
5.バーキットリンパ腫
解説
回答:4
・菌状息肉症・・・皮膚リンパ腫のなかで最も頻度の高い、低悪性度のT細胞性リンパ腫。
第47回 胸腹水・その他 問1~問10の解説は以上です。