平成26年第47回

【解答(消化器編)】平成26年第47回細胞検査士試験過去問の解説(問11-20)

こんにちは!

あすはやです。

平成26年度 第47回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は消化器 問11~問20の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

消化器(問11~問20)

消化器 問11.胃の細胞診について誤っているものはどれですか.

A.Helicobacter pylori の観察にはGiemsa 染色が適している.

B.壁細胞にはミトコンドリアが豊富である.

C.腸上皮化生と印環細胞癌との鑑別は困難である.

D.胃癌の術中腹腔洗浄細胞診で疑陽性の場合はCY 1 と記載する.

E.GIST に対するEUS-FNA(内視鏡超音波下穿刺吸引細胞診)は禁忌である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

胃癌における腹腔洗浄細胞診(CY)・・・

CYX:腹腔洗浄細胞診を行っていない

CY0:腹腔洗浄細胞診で癌細胞を認めない

CY1:腹腔洗浄細胞診で癌細胞を認める

 

GISTに対するEUS-FNA・・・GISTは粘膜下の腫瘍で、内腔からの観察には限界があるため超音波内視鏡は有効。

 

消化器 問12.胃のMALT リンパ腫で誤っているものはどれですか.

A. 細胞性リンパ腫である.

B.Helicobacter pylori と関連がある

C.腺管内への破壊性増殖がみられる.

D.高悪性度のものが多い.

E.治療の第一選択は胃切除術である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

胃マルトリンパ腫・・・辺縁帯B細胞性リンパ腫(節外性)と呼ばれる部分から発生する低悪性度のリンパ腫。

・ピロリ菌の除菌により消失することがあるので、ピロリ菌除菌が第一選択である。

 

消化器 問13.大腸疾患について誤っているものはどれですか.

A.偽膜性大腸炎の原因として抗生物質が挙げられる.

B.潰瘍性大腸炎は癌化する可能性がある.

C.クローン病では非乾酪性肉芽腫を認める.

D.虚血性大腸炎は直腸に好発する.

E.リンパ節転移のある結腸癌はDukes 分類のA に相当する.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

虚血性大腸炎・・・結腸ヒモに沿って縦走潰瘍が出来る。粘膜下層に出血、浮腫が見られる。好発部位は左側結腸(下行~S状結腸)。一般的に直腸には虚血性大腸炎は起こらない。

Dukes分類・・・大腸癌の壁内深達度とリンパ節転移の有無により分類したもので、予後との相関があり、広く用いられている。リンパ節転移のないものがDukesA.B、リンパ節転移のあるものはDukesCであり、DukesA.Bは深達度の違い壁内に限局するものがA、壁を貫くものがBである。

 

消化器 問14.高分化型肝細胞癌の細胞診所見で頻度の低いものはどれですか.

A.脂肪化

B.多核化

C.核の大小不同

D.偽腺管構造

E.細胞密度の増加

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

多核化、核の大小不同・・・中分化、低分化で頻度が高い。

 

消化器 問15.肝臓腫瘍で誤っているものはどれですか.

A.血管腫の穿刺吸引細胞診では肝細胞由来の腫瘍細胞がみられる.

B.血管筋脂肪腫と肝細胞癌の鑑別にHMB 45 免疫染色は有用である.

C.高度異型結節と早期肝細胞癌の細胞学的鑑別は困難である.

D.転移性肝癌(大腸癌)の穿刺吸引細胞診では高円柱状の腫瘍細胞がしばしばみられる

E.肝内胆管癌では胆汁産生を伴う.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

肝血管腫・・・肝原発の良性腫瘍の中で最も頻度の高い非上皮性の腫瘍である。腫瘍は病理組織学的に扁平化した1層の内皮細胞よりなる血管と、幅の狭い結合識の間質より構成され、血管腔に血液の充満を認める。腫瘍細胞は肝細胞由来ではないのでAは誤り。

肝内胆管癌・・・肝内に発生した胆管上皮に似る、あるいはそれに由来する細胞からなる上皮性悪性腫瘍。胆汁は産生しない。

消化器 問16.膵液細胞診で腫瘍細胞が採取されにくいものはどれですか.

A.膵管内乳頭粘液性腫瘍

B.膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)

C.粘液性嚢胞腫瘍

D.神経内分泌腫瘍(G 1)

E.浸潤性膵管癌

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

粘液性嚢胞腫瘍・・・膵管との連続性を欠き、卵巣様間質が確認出来ることが特徴で、原則的には、膵液中に腫瘍細胞が出現することはない。

神経内分泌腫瘍・・・膵管内に発育することは極めてまれである。

 

消化器 問17.膵神経内分泌腫瘍について誤っているものはどれですか.

A.機能性腫瘍が多い.

B.細胞診によるSolid-pseudopapillary neoplasm との鑑別は困難である.

C.内視鏡的超音波下穿刺吸引細胞診は診断に有用である.

D.細胞像では索状やリボン状配列がみられる.

E.Grade 分類は核分裂像と核異型で評価する.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

膵神経内分泌腫瘍・・・多くは無症候性で、いわゆる非機能性である。Grade分類は核異型は含まれない。分裂像やMIB-1陽性率で評価する。

こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html

 

消化器 問18.篩状パターンを特徴とする唾液腺腫瘍について正しいものはどれですか.

1.筋上皮癌

2.粘表皮癌

3.腺房細胞癌

4.唾液腺導管癌

5.オンコサイト癌

解説

回答:4

オンコサイト癌・・・60歳以上の高齢者の耳下腺に好発する。オンコサイトーマの悪性化した腫瘍。早期よりリンパ節転移しやすく遠隔転移率も高い。

細胞所見:壊死性背景、裸核状細胞が散在して見られる。腫瘍細胞の集塊は細胞質が広く好酸性顆粒を伴い、N/C比は低い。また核は大小不同が強く、核内には著名な核小体を認める。

 

消化器 問19.大腸ポリープについて正しいものはどれですか.

1.過形成性ポリープは腫瘍である.

2.若年性ポリープは成人に発生しない.

3.炎症性ポリポーシスは癌化しやすい.

4.管状腺腫は絨毛腺腫より癌化しやすい.

5.家族性大腸腺腫症(FAP)ではAPC 遺伝子変異がみられる.

解説

回答:5

過形成性ポリープ・・・大腸癌取り扱い規約第8版によると、腫瘍様病変に分類。腺管の延長、拡張を伴い、管腔側腺管に上皮の鋸歯状増生が見られるのが特徴である。上皮細胞は腫瘍性異型を欠き、増殖の強い部分は腺管の下半分にある。

若年性ポリープ・・・大腸癌取り扱い規約第8版によると、腫瘍様病変に分類。粘膜表層部の粘膜固有層に毛細血管の増加・拡張、線維芽細胞の増加と線維組織の軽度増加、さらに浮腫や慢性炎症細胞浸潤をともない間質が拡大する。小児から成人まで発生する。

炎症性ポリポーシス・・・大腸癌取り扱い規約第8版によると、腫瘍様病変に分類。炎症に随伴する非腫瘍性ポリープ。偽ポリープと再生性ポリープがある。炎症性ポリープは前癌状態ではない。

管状腺腫・・・大腸癌取り扱い規約第8版によると良性上皮性腫瘍の腺腫に分類。ほぼ全体が管状構造で形成される腺腫。一般に増殖の強い部分は表層部に存在する。

絨毛腺腫・・・大腸癌取り扱い規約第8版によると良性上皮性腫瘍の腺腫に分類。ほぼ全体が狭い間質を有し、分岐することなく粘膜筋板直上から櫛状に突出する腺管からなる腺腫。一般に増殖の強い部分は表層部にあるか全体に及ぶこともある。管状腺腫に比べ絨毛腺腫のほうが高頻度に癌病巣を含んでいる。

消化器 問20.胆汁細胞診で良悪性の鑑別に有用でないものはどれですか.

1.核形不整

2.大型核小体

3.核の配列不整

4.核クロマチンの増量

5.集塊辺縁の凹凸不整

解説

回答:2

胆汁細胞診・細胞判定基準・・・

細胞集塊の判定基準・・・不規則な重積、核の配列不整、集塊辺縁の凹凸不整

個々の細胞の判定基準・・・核の腫大、核形不整、クロマチンの異常

その他の重視される所見・・・壊死背景、多彩な細胞集塊(単個~集塊)の出現

注意:一か所の異常にみで取り上げないこと。長時間放置などで濃縮、濃染した細胞の判定は核内構造が見えれば判定は可能。

 

第47回 消化器 問11~問20の解説は以上です。