平成27年第48回

【解答(技術編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は技術 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

技術(問1~問10)

技術 問1.光学顕微鏡について正しいものはどれですか。

A 顕微鏡でみえる範囲は接眼レンズと視野絞りの直径で決まる。

B コンデンサー絞りを開くとコントラストが増強される。

C 10倍の対物レンズのカラーコードはJIS規格にて赤色である。

D 対物レンズの開校数は分解能に影響しない。

E 分解能とは識別できる2点の最短距離であり、距離が近いほど高分解能である。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

接眼レンズの視野数と実視野・・・顕微鏡で拡大されて見える範囲は接眼レンズの視野絞りの直径(mm)で決まる。この数字を接眼レンズの視野数という。視野数は接眼レンズの種類によって決まっている。実際に観察している標本上の範囲を直径(mm)で表した数字が実視野。

実視野=接眼レンズ視野数÷対物レンズの倍率

コンデンサー・・・コンデンサーは光源からの照明光を集光させる装置でレンズと絞りからなり、対物レンズにあった照射条件を作る。コンデンサーレンズの開口数を調節するのがコンデンサー絞り。

コンデンサー絞り・・・開口絞り、NA絞りとも呼ばれる。開口絞りを変えると像の分解能、コントラスト、焦点深度、明るさが変化する。対物レンズの開口数の70%~80%に調節するとよい。開口絞りを開くとコントラストが悪く、逆に閉じるとコントラストは上がるが分解能が低下する。回析現象(物体の縁取り)が起こり、全体がギラギラして見える。

対物レンズのカラーコード・・・赤色4倍、黄色10倍、緑色20倍、青色40倍、白色100倍。JIS規格。

対物レンズの開口数・・・対物レンズの分解能、焦点深度、明るさに関係する重要な数字。高倍率レンズほど開口数は大きい。

分解能・・・はっきりと識別できる2点の最短距離。高倍率では開口数が大きくなるため分解能が上がる。

分解能=0.61・λ/開口数 λ:光の波長

詳しくはこちらのサイトを参考にして下さい。↓

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技術 問2.細胞診標本の作製法について正しいものはどれですか。

A 喀痰は血痰部を優先して採取する。

B 体腔液標本は細胞の遊離を防ぐためゆっくりと固定液に入れる。

C 乳腺穿刺吸引細胞診は腫瘍の中心から穿刺したほうが良い。

D 穿刺吸引細胞診では嚢胞部と充実部がある場合には嚢胞部を優先する。

E 高度な血尿検体では遠心操作後にバフィーコートを採取して標本作製を行う。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

体腔液標本・・・細胞が剥離しやすい。サラサラの液状の検体は引きガラス法で、粘調度が高い検体は、すり合わせ法で行う。固定液に素早く入れないと乾燥の原因となる。また、ゆっくり固定液に入れる横縞のような模様ができ、鏡検しにくい標本になってしまう。

乳腺穿刺吸引細胞診・・・21~23ゲージの注射針を用い、針先が病変に達したら、内筒を引き注射器内を陰圧にして、針先を前後に数回移動させて細胞を吸引する。検体が吸引されたら内筒を戻して陰圧を解除した状態で病変から針を抜き、針を外した状態で注射器内に空気を吸い込み、スライドガラスに噴き出す。針先で伸ばしたあと、速やかに固定する。腫瘍の中心から採取すると壊死物のみで細胞が採取されない。辺縁部から採取したほうが良い。

穿刺吸引細胞診にて嚢胞部と充実部がある場合・・・嚢胞は液体が袋状のものに入っているものなので細胞はほとんどなく、充実部から穿刺吸引したほうが多く細胞は採取できる。

高度な血尿検体・・・検体を一度遠心した後、沈査の状態を確認して必要に応じて適切な検体処理法を選択して細胞の塗抹を行う。遠心後、バフィーコートが明瞭であれば、その部位から細胞採取を行う。

 

技術 問3.再水和法について正しいものはどれか。

A 乾燥後アルコール固定した標本では再水和処理を行っても染色性の改善は見られない。

B 生理食塩水を用いる場合は標本を20分浸す。

C スキムミルクは用いることはできない。

D 再水和処理後は軽く水洗し、95%アルコールで1~2分固定する。

E 生理食塩水に浸しすぎるとオパーク状核が生じる。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

再水和法・・・固定前に乾燥してしまった標本を再水和法で処理をし、アルコール固定を行うと細胞の染色性がよくなり判定がしやすくなる。しかし乾燥後にアルコール固定した標本では再水和処理を行っても染色の改善性は見られない。遅くても2日以内に再水和処理を行う。

【補足】再水和法のやり方

①未固定で乾燥した標本の上に生理食塩水または牛アルブミンまたはスキムミルクをのせ、30秒~5分おく。

②軽く水洗した後、95%アルコールで30分以上固定し染色する。

※生理食塩水処理ではオパーク状(意味:はっきりしない、不透明な)の核変化が見られることがある。

 

技術 問4.Fluorescence in situ hybridization(FISH)法について正しいものはどれか。

A 細胞周期のM期を判定できる。

B ゲノムにおける特定の遺伝子の点突然変異を証明することは出来ない。

C 液状化細胞診(Liquid Based Cytology:LBC)標本や細胞転写標本でも施行可能である。

D 細胞標本でもパラフィン標本と同等の前処理操作が必須である。

E シグナル数を問題とする場合は、捺印標本よりも組織標本の方が正確な結果が得られる。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

FISH法・・・染色体上や間期核においてある特定の塩基配列や遺伝子を可視的に位置づける方法。FISH法はプローブDNAを標識物質で標識し、これとハイブリットした目的DNAがハプテンに対する蛍光色素標識の抗体により検出されるもの。ヒトの染色体数は23対、つまり46本の染色体が存在する。FISH法ではこの染色体の数と形を検査している。LBCや細胞転写標本でもFISH法は可能である。また組織標本と細胞診標本では処理、工程の仕方が異なる。

FISH法

・多重染色である

・一切片上で増幅、欠失、異数体、転座を判定することができる

・蛍光顕微鏡を使用

・永久標本にならない

 

 

技術 問5.Papanicolaou染色について正しいものはどれか。

A 透徹キシレンは細胞剥離が多く、使用後の濾過が望ましい。

B 検体種類別に分けて固定するのが望ましい。

C ギルのヘマトキシリンは必ずしも色出しの必要はない。

D ビスマルクブラウンは細胞質顆粒を茶褐色に染める。

E 染色中は細胞剥離を防ぐため、上下に動かしてはいけない。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

透徹キシレン・・・細胞剥離が多く浮遊し、剥離した細胞が標本に付着するとコンタミの原因になるため使用後の濾過は行ったほうが良い。

検体種類別に分けて固定・・・体腔液など剥離しやすい検体は固定容器を別にして固定するのが望ましい。

ギルのヘマトキシリン・・・色出しは必要である。

ビスマルクブラウン・・・塩基性色素であり類脂質を染めている。

染色中は染色液に馴染ませるために、ゆっくり上下に動かす。

 


技術 問6.労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則の第2類物質に指定されているものはどれですか。

A クロロホルム

B 硫酸

C アンモニア

D メタノール

E ホルムアルデヒド

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

第2類物質:ホルムアルデヒド、クロム酸、クロロホルム、

第3類物質:アンモニア、塩化水素、硫酸、硝酸、フェノール

上記は病理でよく使用する試薬をピックアップしました。

 

 

技術 問7.蛍光顕微鏡について誤っているものはどれですか。

A 肉眼で見える光(可視光)は通常400~700nmの範囲にある。

B 物体がある波長の光を吸収し、異なる波長の光を放出する物理的な性質のことを蛍光という。

C 蛍光染色は永久標本とはならない。

D 蛍光顕微鏡は生物試料中に含まれる結晶物質の観察に用いる。

E 蛍光物質が放出する波長は、吸収した光エネルギーよりも高いエネルギーである。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

可視光・・・人の目で見える波長。可視光線に相当する電磁波の波長の下界は約360~400nm上界は約760~830nmである。可視光線よりも波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼ぶ。

蛍光・・・ルミネセンスによる光全般に指す。ルミネセンスのうち、電子の励起源として、エネルギーの高い短波長の光(電磁波)を照射することにより生じる発光を指す(フォトルミネセンス)。X腺や紫外線、可視光線が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するものである。つまり、放出されるエネルギーは吸収したエネルギーよりも低いエネルギーになる。発光寿命は短い。

結晶物質の観察には偏光顕微鏡が使用される。

技術 問8.Papanicolaou染色で誤っているものはどれですか。

A ヘマトキシリンは塩基性色素である。

B ヘマトキシリンアルミニウムヘマチンラックは核酸のリン酸基と結合する。

C オレンジG、エオジンY、ライトグリーンはいずれも酸性色素である。

D 酸性色素の化学反応を利用した染色である。

E 一番分子量が小さい色素はライトグリーンである。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

パパニコロウの染色原理・・・細胞質染色は色素の透過性と色素分子の大きさと細胞質の構築密度が大きく関与している。色素分子はオレンジG≪エオジンY≪ライトグリーンとなり、ライトグリーンが最も分子が大きい。分子が小さいオレンジGは構築密度が高い角化細胞へ浸透し、分子が大きいライトグリーンは構築密度が低い中層細胞、底細胞へ浸透する。エオジンYはオレンジGとライトグリーンの中間の挙動をとり、表層細胞へ浸透する。

パパニコロウの色素・・・オレンジG-6染色液(オレンジG)、EA50染色液(エオジンY、ライトグリーン)に使用されている色素はカルボキシル基やスルホン酸基を有し酸性色素に分類され負(-)に荷電している。

ヘマトキシリン・・・塩基性色素。ヘマトキシリン色素自体は染色性を持たない黄色の色素ですが、ヨウ素酸ナトリウムによる酸化(ヘマティン)と媒染剤との結合により正(+)に荷電している。そして負(-)に荷電する核のリン酸基やカルボキシル基とイオン結合し染色される。

 

 

技術 問9.Giemsa染色で誤っているものはどれですか。

A 温風で乾燥させると細胞が青味を帯びやすい。

B 細胞重責が強い標本では細胞の観察が困難になる。

C 緩衝液はクエン酸緩衝液が用いられる。

D メチレンブルーは酸性色素として染色に関与する。

E メタクロマジアとは色素本来の色調とは異なる色に染色される現象を指す。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

ギムザ染色の原理・・・ギムザ液にはメチレンブルーエオジンYアズールBが入っている。アズールBは正(+)に荷電しているため、負(-)に荷電しているDNAリン酸基を有する核に結合し紫色となる。メチレンブルーは正(+)に荷電しているため、負(-)に荷電しているリボソーム(RNAリン酸基)と結合しリンパ球などの細胞質を濃青色~淡青色に染める。エオジンYは負(ー)に荷電しているため、正(+)に荷電している好酸性成分と結合しピンク色に染まる。

・メチレンブルー、アズールBは塩基性色素、エオジンYは酸性色素

・使用する緩衝液は、1/15Mリン酸緩衝液(pH6・4)を蒸留水で10倍希釈し希釈液1mlに対してギムザ原液を1~1.5滴入れ混和する。

【補足】ギムザ染色のやり方

①検体を塗抹後、急速に冷風で乾燥させる、メタノールで1分~3分固定。

②ギムザ染色液で5分~20分(検体の種類で染色時間は異なる)。

③流水水洗10~30秒、冷風~温風で十分乾燥。

④透徹、封入。

 

技術 問10.次のうち誤っているものはどれですか。

A PAS反応は多糖類を過ヨウ素酸で酸化して、生じたアルデヒド基をシッフ試薬で検出する。

B Mucicarmine染色は、主として酸性粘液が赤~淡赤色に染まる。

C Alcian blue染色は、pHの影響を受けない。

D Grocott染色は、クロム酸でアルデヒド基を遊離させ、メセナミン銀により検出する。

E Berlin biue染色は、フェロシアン化カリウムと塩酸で呈色反応を起こす。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

PAS反応・・・多糖類が過ヨウ素酸で酸化され、アルデヒド基を生じ、これがシッフ試薬と呈色反応を起こすことを利用した染色法である。

ムチカルミン染色・・・上皮系の粘液や真菌類は赤色に染色される。結合組織および結合組織間の酸性ムコ多糖類は淡染または染色されない。

アルシアン青染色・・・酸性粘液多糖類のカルボキシル基ないし硫酸基と結合する。この結合はpHの影響を受け、pH1.0以下だと硫酸基のみと結合し、カルボキシル基とは結合しない。酸性粘液多糖類、上皮性酸性粘液は青色の染まる。

グロコット染色・・・真菌に含まれる多糖をクロム酸で酸化し、遊離したアルデヒド基にメセナミン銀を反応させて菌体を染めだす。ニューモシスチス・イロベチ、ムコールの菌体などを染める。

ベルリン青・・・ヘモジデリンを含有した細胞の3価の鉄イオンがフェロシアン化カリウムと結合し、青色のフェロシアン化鉄(ベルリン青)が形成される。染色液の組成は、2%フェロシアン化カリウム溶液と1%塩酸を等量混合したものであり、使用時に調整する。

技術 問1~問10の解説は以上になります。

技術 問11~問20の解説はこちらになります。↓

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