平成27年第48回

【解答(技術編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問11-20)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は技術 問11~問20の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

総論(問11~問20)

技術 問11.Papanicolaou染色について誤っているものはどれですか?

A 封入前に乾燥した場合、コーンフレーク状のアーチファクトがみられる。

B 固定前乾燥では、細胞は収縮してみえる。

C 固定前に乾燥した場合、ライトグリーン好性となる。

D 脱水や透徹が不良な場合、透明感が不足する。

E 湿固定前に乾燥した標本では、再水和法が有効である。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

・コーンフレーク状のアーチファクト・・・ドーゼにキシレンが充分量がない場合、塗抹された細胞の一部が、乾燥したまま封入されることがある。この時、乾燥した部位の標本は、茶褐色のアーチファクトが生じる。防止するためには、ドーゼに塗抹面が浸かる十分なキシレンを満たしておくことが大切である。

固定前に乾燥した場合・・・固定前に乾燥した場合、細胞が膨化し、全体的にぼやけた印象の細胞像になり観察が困難になる。色調は、薄いピンク~オレンジ色となる。

再水和法・・・固定前に乾燥してしまった標本を再水和法で処理をし、アルコール固定を行うと細胞の染色性がよくなり判定がしやすくなる。しかし乾燥後にアルコール固定した標本では再水和処理を行っても染色の改善性は見られない。遅くても2日以内に再水和処理を行う。

 

技術 問12.次のうち正しいものはどれですか。

1 穿刺吸引細胞診では、吸引後に陰圧を解除してから針を抜去する。

2 フィルター法では出血の影響を受けにくいことがある。

3 髄液の遠心条件は1500rpm、5分である。

4 スプレー式コーティング固定はGiemsa染色でも良好な染色が得られる。

5 セルブロックは永久保存ができない。

解説

回答:1

穿刺吸引細胞診・・・針先が病変に達したら、内筒を引き注射器内を陰圧にして、針先を前後に数回移動させて細胞を吸引する。検体が吸引されたら内筒を戻して陰圧を解除した状態で病変から針を抜き、針を外した状態で注射器内に空気を吸い込み、スライドガラスに噴き出す。針先で伸ばしたあと、速やかに固定する。腫瘍の中心から採取すると壊死物のみで細胞が採取されない。辺縁部から採取したほうが良い。

フィルター法・・・5μmほどの細孔がある濾過膜に陰圧をかけて検体を濾過し、フィルター状に細胞を集め、フィルターごと固定して染色する方法。髄液などの少量検体、細胞数が少ない検体に向いている。出血が多い検体では、そのままフィルター法を行うと赤血球がアーチファクトになるので、溶血法を行ってから、フィルター法を行う。

【補足】溶血法・・・0.9%塩化アンモニウム溶液(溶血時間:5~10分)、または1.2%シュウ酸アンモニウム溶液(溶血時間:3~5分)を入れる。

髄液の処理・・・採取後、ただちに800~1000rpm、5分遠沈し、スライドガラスへ塗抹する。検体の液量が少ない場合は生理食塩水を加えて遠沈する。スライドガラスから細胞が剥離したすいため、少量の牛アルブミンやウシ胎児血清を加えることがある。

スプレー式コーティング固定・・・イソピルアルコール(固定)とポリエチレングリコー(細胞表面への保護膜形成と乾燥防止作用)が含まれたスプレーを、スライドガラスに塗抹した部位に霧状に吹き付ける。細やかな霧状の固定液をかけることにより、細胞剥離の少ない染色良好な標本ができる。

※染色を行う前に水洗をポリエチレングリコールを除去しPap染色を行う。

セルブロック・・・塗抹標本では細胞集塊の構築像を十分把握でき ない場合などに、包埋・薄切といった組織学的手法にて連続細胞薄切切片を作製し組織像として観察す ることが可能となることであり、細胞診の診断補助として応用されてきている。 また、包埋された細胞 は半永久的に保存可能であり、連続切片を用いた免疫染色をはじめとして、電子顕微鏡的観察法や mRNA ISH(in situ hybridization)や FISH (fluorescence in situ hybridization)などにも応用可能である。

 

技術 問13.顕微鏡トラブルの原因について誤っている組み合わせはどれですか。

1 光軸のズレ__________「開口絞り」「視野絞り」「眼幅調整」の調整が不十分

2 対物レンズを切り替えたときのピントのズレ______視度調整が不十分

3 特定の対物レンズのみ細胞像が揺れて見える______該当対物レンズのねじ込みが不十分

4 細胞像が鮮明にみえない______________対物レンズの汚れ

5 スクリーニング時、標本が斜めに動く________ステージの固定不良

解説

回答:1

光軸のズレ・・・顕微鏡は接眼レンズや対物レンズなど、いくつかのレンズを組み合わせて目的のものを拡大してみる道具である。そのため、これらのレンズの中心を光が通らないと、光源から対物レンズ、そして接眼レンズ、観察者の目へ続く光軸がずれてしまい、最適な観察像が得られなくなる。光軸調整のために調整するのは「開口絞り」「視野絞り」「コンデンサー」である。

眼幅調整と視度調整・・・観察する際は自分の目幅に接眼レンズの幅を調整し、左右それぞれの視力に視度を調整する。

 

技術 問14.次のうち誤っているものはどれですか。

1 細胞診における検体処理は感染対策が必要である。

2 喀痰検体のすり合わせ回数が多いと細胞が壊れやすい。

3 引きガラス法で高粘稠性検体は引きガラスの角度を大きくする。

4 引きガラス法で大型細胞は引き終わりに集まりやすい。

5 早朝尿は細胞の変性が強いため検体として不適切である。

解説

回答:3

引きガラス法

角度を大きく、速く引く→細胞成分が少ない

角度小さく、遅く引く→細胞成分が多い、粘稠度が高い。

 

技術 問15.液状化細胞診LBC:Liquid-based cytology)について 誤っている ものは どれですか. 

1 乾燥による不適正標本が減る.

2 限られた範囲に塗抹されるため細胞数が減る.

3 細胞の重なりの少ない均一な標本が作製できる.

4 免疫染色や遺伝子検査の追加も可能である.

5 標本作製のコストや検体処理装置が高価である

解説

回答:2

液状化細胞診(LBC)の利点

①採取された細胞を直接、固定液へ入れるため乾燥標本が減る。

細胞が均一に塗抹されるため細胞の重なりが少ない標本になる。

③背景の粘液、白血球が除去されるため背景がきれいで異型細胞確認しやすい。

④限られた範囲に塗抹するため、スクリーニングの効率が上がる。

・液状化細胞診(LBC)の欠点

①専用の固定液、検体処理、メンブランなどを使用するため標本作製のコストが高い。

②乳腺や子宮内膜の細胞診では立体的な構造の残る、従来の方法が良いという意見もある。

 

技術 問16.免疫細胞化学染色について誤っているものはどれですか. 

1.通常エタノールによる湿固定標本を用いる.

2.過酸化水素や過酸化水素加メタノールで内因性ペルオキシダーゼ活性阻止操作を行う.

3.組織診と比較して共染しにくい.

4.核染色はヘマトキシリンを用いることが多い.

5.湿固定時間が長いと抗原性の失活がみられる場合がある.

解説

回答:3

免疫染色と固定・・・一般的に細胞診で用いる免疫染色にはエタノールによる湿固定標本が用いられる。未染色標本はアルコール固定液中で2週間程度保存可能と言われている。

内因性POD活性防止・・・ペルオキシダーゼ標本抗体を用いる場合には、一次抗体を反応させる前に、0.3~3.0%の過酸化水素水あるいは過酸化水素加メタノールで5~30分処理を行い内因性ペルオキシダーゼや赤血球中に含まれる偽ペルオキシダーゼ活性防止操作を行う必要がある。

核染色・・・ギルのヘマトキシリンを使用する場合が多い。核を染める抗体を使用する場合は薄めに染色することがポイントである。

共染・・・細胞集塊が立体的であったり組織片とは異なる条件により共染が濃くなったり偽陰性化が起こることがある。

 

技術 問17.細胞標本を用いた免疫染色について誤っているものはどれですか。

1.剥離防止剤でコートされたスライドガラスを用いることが望ましい.

2.PAS 反応後の標本では,過ヨウ素酸処理により抗原性の失活もあり得る.

3.Labelled streptavidin biotin(LSAB)法は,内因性ビオチンの影響を受けない.

4.未染色標本はアルコール固定液中で 2 週間程度保存可能である.

5.核内抗原などの検出には,熱処理による抗原賦活化が有効である

解説

回答:3

免疫染色(細胞診)・・・Papanicoiau染色でも抗原は長期に渡り保持されている。ただし、ギムザ標本やPAS染色は、乾燥や過ヨウ素酸処理により抗原の種類によっては抗原の失活や減弱の可能性もある。

LSAB法・・・ABC法と同様であるが、ビオチンと酵素標識ストレプトアビジンの両者は親和性が高く、非可逆的な結合を示し更なる好感度が得られる。熱による抗原賦活化処理で内因性ビオチンの非特異反応が起こる。

抗原の賦活化処理・・・アルコール固定ではホルマリン固定にみられる強固な蛋白質の架橋反応は生じないため、抗原賦活化は必要ないと考えられてきた。しかし核内抗原などの検出にはクエン酸緩衝液(0.01M、pH6.0)を用いた加熱による抗原賦活化が有効なことがある。

 

技術 問18.次のうち 誤っている ものはどれですか

1.Papanicolaou 染色は,固定時間が長いと染色性に影響する.

2.生理食塩水による洗浄検体では,核の膨化や変性は生じない.

3.胆汁や膵液は酵素の影響で細胞変性を起こしやすい.

4.固定前乾燥標本では腺上皮細胞集塊は合胞状にみえることがある.

5.噴霧固定の場合には,噴霧量が少ないと細胞質が赤みを帯びる.

解説

回答:2

免疫染色と固定・・・一般的に細胞診で用いる免疫染色にはエタノールによる湿固定標本が用いられる。未染色標本はアルコール固定液中で2週間程度保存可能と言われている。

生理食塩水による洗浄検体・・・時間の経過戸と共に細胞の核の膨化、変性が起こる。

胆汁や膵液・・・採取後に迅速に処理を行わないと、自身の酵素により強い細胞変性が起こる。すぐに処理できない場合は、遠沈し冷蔵保存をする。

固定前乾燥標本・・・細胞が膨化し、細胞集塊は合胞状に見える可能性もある。

噴霧固定・・・噴霧量が少ないと細胞が乾燥する部位が出てくることもあるため、細胞の好酸性化が見られることがある。

 

技術 問19.次のうち誤っているものはどれですか

1.細胞診は医療事故において訴訟の対象となり得る.

2.医療過誤は医療従事者が業務上の注意義務を怠り患者に障害を及ぼした場合のことである.

3.健康診断で尿中メチル馬尿酸検査の対象となる有機溶剤はキシレンである.

4.受診者ラベルの貼られた細胞診標本は,個人情報を含むものとして扱う必要がある.

5.インシデントとは医療行為の中で患者に障害が起こった事象のことである

解説

回答:5

医療過誤・・・厚生労働省リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会では、医療過誤は、医療事故の一類型であって医療従事者が医療の遂行において医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為と定義されている。

詳しくはこちらのサイトを参考にして下さい。↓

厚生労働省 ホームページ

尿中メチル馬尿酸・・・尿中メチル馬尿酸はキシレンの代謝物。主な吸収経路は吸入であり、約95%が安息香酸に代謝され、次いでグリシン抱合を受け、メチル馬尿酸として尿中に排泄される。

インシデント・・・誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの。または誤った医療行為などが実施されたが結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの。

アクシデント・・・医療行為の中で患者に障害が及び、既に損害が発生しているもの。不可抗力によるものや自傷行為なども含む。なお医療従事者の過誤の有無は問わない。

 

 

技術 問20.ホルマリンについて誤っているものはどれですか。

1.作業部屋の管理濃度は 0.1ppm である.

2.発がん性が指摘されている.

3.ホルマリンは中和処理を行えば下水に廃棄してよい.

4.6 ヶ月に 1 回の作業環境測定を行う義務がある.

5.作業環境測定の結果は各事業所で 3 年間保管する義務がある

解説

回答:5

ホルマリン作業環境測定

6か月毎に1回作業環境測定を実施し、その記録を30年間保管することが義務付けられている。

【測定方法】

①単位作業場所ごとに5点以上の測定点で1時間以上の濃度測定(A測定)

②単位作業場所の中で最も高濃度となる場所と時間における10分間濃度測定(B測定)

管理濃度:0.1ppm

特定第2類物質

 

ホルマリン中和方法・・・劇物に指定されているため、そのままでは破棄できない。

①水でホルマリンを希釈した後、次亜塩素酸を含む水溶液(次亜塩素酸ナトリウムなど)を加えて酸化分解させ、廃棄する方法。

②水酸化ナトリウム水溶液などでホルマリンのpHをアルカリ性にし、過酸化水素水を加えて酸化分解し、水で希釈した後、廃棄する方法。

 

技術 問11~問20の解説は以上になります。

技術 問1~問10の解説はこちらになります。↓[irp posts=”569″ name=”【解答(技術編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)”]

 

胸腹水・その他 問1~問10の解説はこちらになります。↓

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