平成27年第48回

【解答(婦人科編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問1-問10)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は婦人科 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

婦人科(問1~問10)

婦人科 問1.女性性器について正しいものはどれですか.

A.腟,子宮,卵巣はミューラー管から発生する.
B.腟内はデーデルライン桿菌によって弱アルカリ性に保たれている.
C.子宮の体部筋層は横紋筋からなる.
D.子宮の背側には直腸があり,直腸子宮窩をダグラス窩という.
E.卵管には蠕動運動がみられる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

・・・膣は重層扁平上皮に被われており、上1/3は中胚葉由来。内生殖器原基である左右のミュラー管が癒合して、尿生殖洞の後面に結合し、子宮、卵管、膣上1/3が形成される。膣下2/3は外胚葉由来で、尿生殖洞と会陰部の皮膚が陥没して外性器とともに形成される。

子宮・・・左右のミュラー管が癒合することにより1個の器官として形成される。基本的には分厚い平滑筋で構成されるが内膜は円柱細胞に被われており、生理周期にともなって増殖と消退を繰り返す。

卵巣・・・内分泌腺組織であるが発生は、大元の細胞は内胚葉性の卵黄嚢由来。これらの原始生殖細胞は移動し、生殖腺原基となる部位である生殖隆起の位置に到達する。生殖隆起自体は中胚葉由来であり、移動してきた原始生殖細胞と共に生殖腺原基を形成する。生殖腺原基は、そのままだと卵巣へ分化するが、SRY遺伝子が存在して正常に機能する場合には性腺原基は精巣へ分化する。

デーデルライン桿菌・・・生理的に膣内に存在するグラム陽性細菌。扁平上皮に含まれるグリコーゲンの存在下に生存し、乳酸を産生。pHを酸性に保ち、雑菌の増殖を防ぐ自浄作用に役立っている。

 

婦人科 問2.コルポスコピーの所見について正しいものはどれですか.

A.ナボット卵が発生する部位は扁平上皮(S)の領域である.
B.白斑は酢酸加工なしで観察される.
C.赤点斑(P)は毛細血管が点状に見える限局性の異常病変である.
D.モザイク所見は非腫瘍性病変では観察されない.
E.浸潤癌では血管の太さは太くなるが,血管距離は規則的である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

ナボット卵・・・ナボット嚢胞ともいう。子宮膣部びらんを形成している頸管腺の表層上皮に扁平上皮化生がおこり、そのために深部の頸管腺がその開口部を閉鎖されて生ずる貯留嚢胞である。膣部びらんの生理的な治癒過程に伴うものであるので30~40歳代に多くみられ治療を必要とすることはまれである。

酢酸加工・・・3%酢酸に十分浸した綿球を子宮膣部に軽く押し当てる酢酸加工を行いながら、異常所見の検出を中心とした観察を行う。酢酸加工は1度のみならず、繰り返して行う。この操作によって膣部表面に白濁する部分が出現し、形態、程度、消退するまでの時間を観察する。白斑:酢酸加工前から認められる隆起性の白色限局性病変。白色上皮:酢酸加工後に見られる限局性の異常病変。

浸潤癌所見・・・コルポスコープ下に浸潤癌であることが明らかに分かる状態を浸潤癌所見ICという。なかでもコルポスコープなしの肉眼にて既に癌であることが明らかな状態を肉眼浸潤癌所見IC-bとする。コルポスコピー浸潤癌所見IC-aの所見として不整で凹凸を認める表面構造や、血管の不整拡張や不整走行、大型異常血管、著名なびらん、潰瘍などがあげられている。

 

婦人科 問3.正しいものはどれですか.

A.エストロゲンは子宮内膜の分泌期変化に関与する.
B.月経不順は思春期や更年期で頻度が高い.
C.神経性食思不振症は無月経の原因となる.
D.エストロゲンは主として黄体細胞で産生される.
E.顆粒膜細胞腫はプロゲステロンを産生する.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

月経周期と内膜・・・卵巣内で卵胞が発育する増殖期には、エストロゲンの増加によって子宮内膜が増殖して厚くなる。排卵後、分泌期に入ると、黄体から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンの作用により子宮内膜はさらに厚みを増す。

エストロゲンは、卵巣の顆粒膜細胞、外卵胞膜細胞、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞で作られる。エストロゲンはステロイドホルモンの一種であり、その受容体(ER)は細胞内にある。

 

婦人科 問4.絨毛性疾患について正しいものはどれですか.

A.胞状奇胎では正常妊娠に比べ血中βhCG 値が高値である.
B.全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別には p57KIP2による免疫染色が有用である.
C.全胞状奇胎のほとんどは 3 倍体によって発生する.
D.妊娠性絨毛癌では絨毛形態がみられる.
E.妊娠性絨毛癌は非妊娠性絨毛癌に比べて化学療法に対する反応が悪い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

全胞状奇胎・・・受精時に卵由来の核が不活化し、精子由来の核のみが分裂増殖していく。受精後に何らかの理由で卵子の核が消失、またはもともと核を持たない卵子に精子が受精し精子の染色体だけを使って細胞分裂がはじまったもので父方精子由来の有核発生で、46xx2倍体を形成している。父方精子由来の遺伝情報だけでは胎児成分を作ることができず、絨毛組織だけの増殖となる。子宮全体にぶどうの房状の絨毛の異常増殖が認められる。

妊娠性絨毛癌・・・ほとんどの絨毛癌は妊娠性である。うち約半数が胞状奇胎から癌化したもので、他には流産、正常分娩後などがある。病状が進行してから発見されるケースでは正常妊娠後のケースが多い。局所浸潤性と血管親和性を有し、急速に増殖して早い時期から血行性転移を起こしやすい。とくに肺への転移が多い。

絨毛癌・・・胎盤を構成する絨毛を発生母地とする悪性腫瘍。絨毛上皮腫とも呼ばれる。絨毛形態を認めず、栄養膜細胞類似の悪性細胞の増殖を認め、出血や壊死等多彩な病理像を認める。不正性器出血、肺転移、β-hCG異常高値。主に化学療法が中心となる。

婦人科 問5.子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)について正しいものはどれですか.

A.CIN1 は腫瘍性異型細胞が上皮の下層 1/3 に限局する病変である.
B.HSIL は概ね CIN1,2 に相当する.
C.コイロサイトーシスがあれば CIN2 とする.
D.腺侵襲が認められれば CIN3 とする.
E.CIN3 には高度異形成,上皮内扁平上皮癌が含まれる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

CIN分類・・・軽度異形成に相当するものがCIN1、中等度異形成に相当するものがCIN2、高度異形成に相当するものがCIN3である。ベセスダ方式でみると、軽度異形成はLSILとし、中等度異形成、高度異形成はHSILとする。

※コイロサイトーシスは軽度異形成に含まれる(CIN1)。

※上皮内癌は、しばしば腺侵襲を伴うが、これは浸潤としない(CIN3)。つまり腺侵襲が見られたからといってCIN3とは出来ない。

婦人科 問6.子宮体部類内膜腺癌について正しいものはどれですか.

A.I 型子宮内膜癌に含まれる.
B.子宮内膜異型増殖症からの移行はまれである.
C.核異型は Grade 評価に影響を与えない.
D.充実性増殖の割合が 10%以下であれば Grade 1 である.
E.Morula(桑実胚様細胞巣)は扁平上皮への分化に含まれる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

子宮体部類内膜腺癌・・・ホルモン依存性に発生するⅠ型子宮内膜癌。閉経後に好発し、患者年齢のピークは50~60歳代。未経産婦、肥満、ホルモン補充療法、乳癌に対するタモキシフェンの使用、エストロゲン産生卵巣腫瘍、多嚢胞性卵巣などが危険因子。リンチ症候群の女性の約半数に発生。子宮内膜異型増殖症からの移行は20~25%程度であるため、まれであるとは言えない。

Grade1:充実性増殖が腺癌成分の5%以下

Grade2:充実性増殖6~50%

Grade3:充実性増殖が50%を超える

桑実胚様細胞巣Morula=扁平上皮化生、扁平上皮性変化

 

婦人科 問7.子宮体部腫瘍について正しいものはどれですか.

A.ポリープ状異型腺筋腫は閉経後に発生することが多い.
B.同所性癌肉腫の肉腫成分として,横紋筋肉腫や内膜間質肉腫が挙げられる.
C.漿液性腺癌では p53 遺伝子の変異がみられることが多い.
D.子宮内膜間質肉腫では腫瘍細胞が細血管を同心円状に取り巻く像が特徴的である.
E.平滑筋腫瘍に壊死がみられた場合には平滑筋肉腫とする.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

ポリープ状異型腺筋腫・・・良性の上皮性・間質性混合性腫瘍の1つ。30~40歳代の未経産婦、不妊症患者が中心。好発部位は子宮狭部~体下部で、子宮体癌を合併することがある。90%以上にMoula形成が見られる。

癌肉腫・・・癌腫成分は類内膜腺癌などの腺癌の場合が多い。

同所性:平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化子宮内膜肉腫

異所性:横紋筋肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫など

平滑筋肉腫・・・平均年齢は50歳前後で稀な疾患。ほとんどが孤発性に発生し境界が不明瞭で、しばしば子宮内腔に突出する。割面は柔らかく灰色から黄色で、出血や壊死を伴う部分ではピンク色をしている。進行したものでは著名な腫瘍性背景を示し、細胞崩壊物や赤血球などが多数出現する。壊死があるからといって、平滑筋肉腫とは判定できない。

 

婦人科 問8.本邦における基本的治療について正しい組み合わせはどれですか.

A.CIN1 ――――――――――――――――――― 円錐切除術
B.子宮頸癌 IB2 期 ―――――――――――――― 準広汎子宮全摘出術
C.子宮頸癌 IIIB 期 ―――――――――――――- 広汎子宮全摘出術
D.妊孕性温存希望のある子宮内膜異型増殖症 ―― 高用量プロゲステロン療法
E.筋層浸潤のない子宮体癌 IA 期 ―― 単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

CIN3から円錐切除が行われる

子宮頸癌 IB2 期・・・同時化学放射線療法、広汎子宮全摘出術

・筋層浸潤のない子宮体癌 IA 期・・・拡大子宮全摘出術

 

詳しくは、こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment_option.html

婦人科 問9.子宮頸癌の臨床進行期分類として正しいものはどれですか.

A.臨床進行期分類は原則として治療開始前に決定し,以降これを変更しない.
B.IA 期の診断は円錐切除など病変全体の観察によって行う.
C.腺癌では IA1 期,IA2 期の細分類は行わない.
D.子宮頸癌が体部に浸潤すると II 期に分類される.
E.子宮傍組織に浸潤すると III 期に分類される.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

・腺癌では IA1 期,IA2 期の細分類は行うこととする

・子宮頸癌が体部に浸潤すると ⅡB 期に分類される

・子宮傍組織に浸潤すると ⅡB 期に分類される.

 

詳しくは、こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10

 

婦人科 問10.HPV について 誤っている ものはどれですか.

A.頸部腺癌との関連性は低い.
B.16,18,52 型は高危険群に含まれる.
C.コイロサイトは HPV 感染の所見である.
D.尖圭コンジローマでは 6,11 型がおもにみられる.
E.CIN3 ではおもに低危険群 HPV が検出される.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

・子宮頸部腺癌と関連が高いHPVは18型です。

高いリスク型HPVの持続感染が子宮頸がんの発生に関与している。高いリスクのHPVの陽性率は軽度異形成で80%、中等度異形成で90~100%、上皮内癌および浸潤癌ではほぼ100%である。

 

婦人科 問1~問10の解説は以上になります。

婦人科 問11~問20の解説はこちらになります。↓

【解答(婦人科編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問11-問20)こんにちは! あすはやです。 平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は...