こんにちは!
あすはやです。
平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は呼吸器 問1~問10の解説を行います。
学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!
Contents
- 呼吸器(問1~問10)
- 呼吸器 問1.次のうち重層扁平上皮で覆われているのはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問2.Ⅱ型肺胞上皮細胞について正しいものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問3.喀痰中にオレンジ G で染色される菱形結晶が認められた.次のうち原疾患として適切なもの はどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問4.腺癌よりも扁平上皮癌に認められる所見として正しいのはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問5.肺扁平上皮癌について正しいものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問6.縦隔腫瘍の好発部位について正しい組み合わせはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問7.次のうち 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問8.肺腺癌の亜型のうち 特殊型に含まれない ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問9.高分化乳頭状腺癌と異型腺腫様過形成の鑑別に 有用な細胞所見でない ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問10.小細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
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- 関連
呼吸器(問1~問10)
呼吸器 問1.次のうち重層扁平上皮で覆われているのはどれですか.
A.声帯
B.鼻前庭
C.咽頭鼻部
D.副鼻腔
E.呼吸細気管支
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:1
・咽頭・・・咽頭に続く細長い器官で、下気道の気管につながっている。咽頭蓋の前面、後面の上半分声帯壁および室壁の一部の粘膜上皮は重層扁平上皮であるが、その他の部分は杯細胞が散在する多列線毛上皮である。
・鼻腔・・・入口付近のところは、鼻前庭と呼ばれ、重層扁平上皮で覆われている。鼻前庭の奥は呼吸部と嗅部に分けられる。呼吸器の粘膜は豊富な杯細胞を有する多列線毛円柱上皮である。
・咽頭鼻部・・・後鼻口から口狭までの領域。粘膜は偽重層線毛上皮に被われる。耳管咽頭口が開口する。
・副鼻腔・・・前頭洞、上顎洞、蝶形骨洞、前後篩骨洞に分けられ、鼻前庭より続いている多列線毛円柱上皮で被われているが、細胞の丈が低いこと、杯細胞の数が少ないことが異なる。
・細気管支・・・細気管支の粘膜上皮は気管支までとは違い単層線毛上皮であるが、終末、呼吸細気管支と向かうにしたがって丈が低くなり単層立方上皮となる。また杯細胞も少なくなり、終末細気管支以下には認められず線毛細胞が多くを占め、しだいに線毛のない円柱上皮が認められるようになる。
呼吸器 問2.Ⅱ型肺胞上皮細胞について正しいものはどれですか.
A.扁平な細胞である.
B.細気管支を覆う細胞である.
C.無線毛細気管支上皮細胞からできている.
D.サーファクタントアポ蛋白を分泌する.
E.肺胞傷害後の修復過程で増生する.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:5
・Ⅱ型肺胞細胞・・・大肺胞細胞や分泌細胞とも呼ばれる。細胞質は泡沫状、大型で円形の核と明瞭な核小体を持っている。細胞質に好オスミウム小体が見られる。Ⅱ型肺胞上皮細胞は表面活性物質であるサーファクタントアポプロテイン(NapsinA)を分泌している。サーファクタントアポプロテインは、クララ細胞(無線毛細気管支)でも産生される。Ⅰ型肺胞上皮細胞が脱落した後の障害後の肺胞腔ではⅡ型肺胞上皮細胞が増殖することで脱落した肺胞腔を埋め、その後、Ⅰ型肺胞上皮細胞に分化することで修復される。
扁平な形の細胞は、Ⅰ型肺胞上皮細胞である。
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。イラストがわかりやすいです。↓
https://www.amed.go.jp/news/release_20171003-01.html
呼吸器 問3.喀痰中にオレンジ G で染色される菱形結晶が認められた.次のうち原疾患として適切なもの はどれですか.
A.気管支喘息
B.肺吸虫症
C.肺扁平上皮癌
D.気管支拡張症
E.肺クリプトコッカス症
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:1
・シャルコーライデン結晶・・・菱型八面体の結晶物質でオレンジG、エオジンに染まるが、稀にライトグリーンにも染まる。好酸球の細胞質内顆粒が再結晶したものである。喘息、肺吸虫などでも見られる。
呼吸器 問4.腺癌よりも扁平上皮癌に認められる所見として正しいのはどれですか.
A.中心核
B.粘液空胞
C.レース様細胞質
D.核縁の切れ込み
E.細胞質の層状構造
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
扁平上皮癌と腺癌の細胞診所見について。
・角化型扁平上皮癌・・・
背景:壊死物質
細胞:オレンジGに強染する多彩な形状の角化異常細胞、細胞相互封入像、癌真珠(玉ねぎ状に配列)
核:クロマチンが不規則に凝集し濃染、核の腫大、大小不同
・非角化型扁平上皮癌・・・
背景:壊死物質
細胞:類円形から多稜形、集塊から孤立散在性、流れるようなシート状構造
核:顆粒状の核クロマチン、核中心性
・腺癌・・・
背景:きれいな場合と壊死物質がある場合がある。
細胞:配列の乱れ、不規則重積、腺腔様配列、泡沫状、レース状、粘液様空胞
核:核小体が目立つ、立体的な核溝、切れ込み等の核形不整、核内封入体
呼吸器 問5.肺扁平上皮癌について正しいものはどれですか.
A.男女比はほぼ 1:1 である.
B.主気管支に最も多く発生する.
C.90%以上が喫煙者である.
D.画像所見で腺癌に比べ空洞がみられることが多い.
E.肺癌での割合は経年的に増加傾向にある.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:4
・扁平上皮癌・・・喫煙との関連が強く、中枢領域の気管支内に結節性またはポリープ状の病変。※主気管支や葉気管支に発生するが、どこに多いかは不明である。
気管支内に発生しやすいので、喀痰への出現が高い。しかし最近では、肺野に発生する末しょう型の頻度が半数をしめるようになってきた。男女比でいうと男性に多い。胸部X腺では腫瘤内部に空洞形成を伴うことが多い。
呼吸器 問6.縦隔腫瘍の好発部位について正しい組み合わせはどれですか.
A.胸腺腫 ―――――― 前縦隔
B.神経内分泌腫瘍 ―― 後縦隔
C.胚細胞腫瘍 ―――― 中縦隔
D.悪性リンパ腫 ――― 前縦隔
E.神経原性腫瘍 ――― 後縦隔
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
・上縦隔・・・甲状腺腫
・前縦隔・・・胸腺腫、胸腺癌、胚細胞腫、心嚢嚢腫、神経内分泌腫瘍
・中縦隔・・・リンパ腫、気管支嚢腫、食道嚢腫
・後縦隔・・・神経原性腫瘤
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓
http://www.kurume-syuyou.jp/about/task/result_006.html
呼吸器 問7.次のうち 誤っている ものはどれですか.
A.基底細胞増生は炎症性疾患や高度喫煙者にみられる.
B.線毛円柱上皮細胞は線毛運動により微細な異物を排除する.
C.慢性気管支炎や気管支拡張症では杯細胞増生がみられる.
D.基底細胞は N/C 比の大きな大型細胞である.
E.CCP 細胞は基底細胞が変化したものである.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2(消去法で2としましたが、Aは正解なのでEのみが誤っていると思います)
・基底細胞・・・小型でN/C比が高く、円形核でやや厚いライトグリーンに染まる細胞質を有する。クロマチンは顆粒状で粗く均一である。平面的で敷石状に出現し、核は均一である。喀痰中には、ほとんど出現しない。高度な喫煙など外的刺激、疾患による上皮の破壊が起こると、基底細胞、杯細胞が増殖し扁平上皮化生が起こる。
・CCP細胞(Ciliocytophthoria)・・・変性円柱上皮細胞とも呼ばれる。線毛円柱上皮細胞にウィルスが感染し変性する。気管支炎、喘息、アレルギーで出現する。
呼吸器 問8.肺腺癌の亜型のうち 特殊型に含まれない ものはどれですか.
A.腸型腺癌
B.胎児型腺癌
C.淡明細胞型腺癌
D.印環細胞型腺癌
E.膠様(コロイド)腺癌
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:4
肺腺癌 特殊型の特徴
・微小乳頭状増殖優位型
・浸潤性粘液癌
・膠様(コロイド)腺癌
・胎児型(低および高悪性度)
・腸型腺癌
呼吸器 問9.高分化乳頭状腺癌と異型腺腫様過形成の鑑別に 有用な細胞所見でない ものはどれですか.
A.細胞配列の極性
B.細胞境界の明瞭性
C.細胞集塊の大きさ
D.核内封入体の出現頻度
E.核の切れ込みの出現頻度
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:1
・異型腺腫様過形成(AAH)・・・通常5mm以下の大きさの限局性病変で、立方状から低円柱状の上皮細胞が、既存の肺胞や呼吸細気管支を置換して増殖する病変である。肺癌取り扱い規約では前浸潤性病変に含まれる。
異型腺腫様過形成(AAH)の細胞像
細胞:平面上配列、重積性はなし。腺癌と比較してN/C比は低い。
核:クロマチンは均等分布、顆粒状。腺癌と比較して増量に乏しい。時に核内封入体、核溝を伴うこともある。また腺癌と比較してN/C比は低く、2核細胞の出現率も高い。
呼吸器 問10.小細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
A.N/C 比が高く,ほぼ裸核状を示す.
B.腫瘍細胞はリンパ球の 3 倍以上である.
C.核小体は明瞭に認める.
D.核の鋳型状配列を示す.
E.核縁が薄く,核線を認める.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:3
小細胞癌の細胞像
・大小不同のある小型の細胞が緩く結合している、シート状配列。
・腫瘍細胞はリンパ球より大きい。
・N/C比は大きく裸核状。
・細胞が相互に鋳型状に接する。
・核は脆く、核が圧挫により線状となる。
・核小体は基本的には目立たない。
呼吸器 問1~問10の解説は以上になります。
呼吸器 問11~問20の解説はこちらです↓