こんにちは!
あすはやです。
平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は呼吸器 問11~問20の解説を行います。
学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!
Contents
- 呼吸器(問11~問20)
- 呼吸器 問11.次のうち 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問12.次のうち 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問13.次のうち 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問14.肺癌について正しいものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問15.次のうち正しいものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問16.肺癌検診における喀痰細胞診の判定基準について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問17.小細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問18.次のうち 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問19.大細胞神経内分泌癌について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 呼吸器 問20.定型的カルチノイドについて 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- Share this:
- 関連
呼吸器(問11~問20)
呼吸器 問11.次のうち 誤っている ものはどれですか.
A.放射線による修復細胞の核は類円形で増大し,大小不同がみられる.
B.放射線による修復細胞には核分裂像がみられない.
C.正常細胞では放射線による DNA 二本鎖の切断部分が容易に修復される.
D.放射線による細胞死には分裂死と間期死(アポトーシス)がある.
E.放射線照射後の細胞変化として癌細胞と正常細胞ともに巨細胞化がみられる.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:3
正常気管支上皮細胞の放射線による変化
変性は2,000rad前後から起こり細胞質が好酸性を示すようになる。そして化生細胞の出現、扁平上皮癌と似たような所見が現れる。具体的な変化として、核、細胞質の腫大、核の破壊と融解、照射線量の増加につれて空胞変性、奇型細胞の出現、巨細胞の出現が見られる。
放射線照射と細胞死
放射線誘発アポトーシスは、細胞の種類や状況によって大差があり、照射後分裂を介さずに起こる間期死型と数回の分裂を経て生じる増殖死型があり、その発現機構も多様である。この細胞死は放射線障害の発現と抑制の両面に働き、放射線癌治療にも関与する。
※修復細胞は増殖が活発であるため核分裂像があってもおかしくはないと考えられます。
呼吸器 問12.次のうち 誤っている ものはどれですか.
A.腺様嚢胞癌は篩状構造が特徴である.
B.粘表皮癌は扁平上皮系細胞と粘液細胞が混在する.
C.多形癌は巨細胞および紡錘細胞成分がそれぞれ 10%以上である.
D.腺扁平上皮癌は腺癌および扁平上皮癌の成分がそれぞれ 20%以上である.
E.癌肉腫は明らかな癌腫と異所性成分からなる肉腫が混在した腫瘍である.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:4
2015年の新WHO 第4版が改訂されました。
・多形癌・・・紡錘細胞あるいは巨細胞を含む扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、あるいは紡錘細胞と巨細胞のみからなる癌である。定義上、紡錘細胞、巨細胞の成分は腫瘍全体の10%以上を占めるものとされる。紡錘形癌は紡錘形の腫瘍細胞のみからなる癌、巨細胞癌は巨細胞性腫瘍細胞のみからなる癌である。
※Cは改訂前の定義です。
・腺扁平上皮癌・・・扁平上皮癌と腺癌成分の両者から構成され、それぞれの成分が少なくとも腫瘍全体の10%以上を占めている癌腫。
※Dは改訂前の定義です。
呼吸器 問13.次のうち 誤っている ものはどれですか.
A.K-ras 変異陽性肺腺癌は杯細胞の形態を示すことが多い.
B.ALK 陽性肺癌は微小乳頭状増殖(micropapillary pattern)を伴うことが多い.
C.EGFR 変異陽性肺癌は粘液産生に富む篩状構造を示す腺癌に多い.
D.ALK 陽性肺癌は細胞質に粘液を有し,印環細胞様を示すものが多い.
E.EGFR 変異陽性肺癌は肺胞上皮置換型の高分化腺癌を示すことが多い.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:3
・K-RAS・・・喫煙者に頻度が高く、男性に頻度が高い傾向がある。粘液を産生する杯細胞からなる腺癌で変異を有する。K-RAS変異は予後不良因子とする数々の報告がある。K-RAS変異は大腸癌、膵臓癌、卵巣粘液癌など形態学的に杯細胞を特徴とする腫瘍に見出される。
・EGFR・・・東洋人に多く非喫煙者に頻度が高い。EGFR遺伝子変異は女性に頻度が高い。EGFR遺伝子変異を示す腺癌はⅡ型肺胞上皮やクララ細胞などの抹消肺細胞への分化を認める。EGFR遺伝子増殖は腫瘍の進展、特に浸潤性増殖との関連が指摘されている。EGFR遺伝子変異、特にそのホットスポット変異は他の臓器での腫瘍で検出されることはない。
・ALK・・・ALK癒合遺伝子を持つ肺癌は基本的には腺癌に限られ、その約5%程度に認められるとされている。臨床的には若年発症例が多く、組織学的には粘液産生性細胞が充実性ないし篩状構造を呈して増殖する。また肺腺癌では極めて稀な印環細胞を所々に有することも報告されている。
呼吸器 問14.肺癌について正しいものはどれですか.
1.腺癌では喫煙の因果関係が濃厚である.
2.非小細胞肺癌の病期Ⅰ期では手術療法が選択される.
3.最も多い組織型は扁平上皮癌であり,肺がんの約 50%を占める.
4.わが国の部位別がん死亡数は男女共に第一位である.
5.分子標的治療を行う際,非小細胞癌を扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分ける必要はない.
解説
回答:2
・肺腺癌・・・腺癌は肺癌の中でも最も多い組織型であり、その多くは浸潤性腺癌。男性優位ではあるが、女性や非喫煙者に生じる肺癌の多くは腺癌。抹消発生が多く、喀痰検査では検出は難しい。早期には無症状だが、進行すると胸膜や胸壁浸潤による胸水貯留、胸痛、呼吸困難が出現する。
・部位別がん死亡率・・・男性1位は肺癌、女性は1位は大腸癌、総合して肺癌。
・分子標的治療薬・・・現在の治療のガイドラインでは、非小細胞癌を扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分けている。扁平上皮癌であればPD-L1染色を行い、非扁平上皮癌であれば、遺伝子検査(EGFR、ALK、ROS-1、BRAF)とPD-L1染色を行い、各結果によって使用する薬剤がきまる。
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓
https://www.haigan.gr.jp/guideline/2017/1/2/170102ju00.html
呼吸器 問15.次のうち正しいものはどれですか.
1.扁平上皮化生細胞は健常者の喀痰中には認められない.
2.高度異型扁平上皮細胞は一部に癌が含まれている可能性がある.
3.気管支における杯細胞の増生や扁平上皮化生は前癌病変として扱われる.
4.喀痰中に中等度異型扁平上皮細胞が認められた場合は直ちに精密検査をおこなう.
5.高度異型扁平上皮細胞のほとんどはヒトパピローマウィルスが関与している.
解説
回答:2
・扁平上皮化生細胞・・・基底細胞が増生し、最表面の細胞が扁平化を示す。化生細胞は可逆的な変化で、原因がなくなれば、元の上皮が再生する。従って、健常者の喀痰にも見られる。
・中等度異型扁平細胞・・・扁平上皮癌を疑う所見はなく、細胞判定は陰性でClassⅡに相当する。癌細胞を誤判定する可能性を少なくするために追加検査。
呼吸器 問16.肺癌検診における喀痰細胞診の判定基準について 誤っている ものはどれですか.
1.基底細胞増生は B 判定である.
2.線毛円柱上皮細胞は B 判定である.
3.軽度異型扁平上皮細胞は B 判定である.
4.正常上皮細胞のみの場合は B 判定である.
5.喀痰中に組織球を認めない場合は B 判定である.
解説
回答:5
・喀痰中に組織球が認められない場合は、材料不適、再検査となる。
呼吸器 問17.小細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
1.TTF-1 が陽性を示すことが多い.
2.気管支閉塞をきたすことが多い.
3.神経内分泌への分化の証明は必要としない.
4.腺癌や扁平上皮癌が混在している場合は小細胞癌としない.
5.非定型的カルチノイドとの鑑別には核分裂像の有無が重要である.
解説
回答:4
神経内分泌癌、カルチノイドについて
・高悪性度神経内分泌腫瘍(=神経内分泌癌):小細胞癌,大細胞神経内分泌癌
・低悪性度神経内分泌腫瘍:定型カルチノイド、異型カルチノイド
定型カルチノイド | 異型カルチノイド | 小細胞癌 | 大細胞神経内分泌癌 | |
核分裂像 | 0~1個/10 HPF | 2~10個/10 HPF | 11個以上/10 HPF | 11個以上/10 HPF |
壊死 | なし | 部分的 | 広範 | 広範 |
神経内分泌マーカー
chromogranin A synaptophysin CD56 |
|
1種類以上陽性になることが必要 |
定型カルチノイド | 異型カルチノイド | 小細胞癌 | 大細胞神経内分泌癌 | |
---|---|---|---|---|
核分裂像 | 0~1個/10 HPF | 2~10個/10 HPF | 11個以上/10 HPF | 11個以上/10 HPF |
壊死 | なし | 部分的 | 広範 | 広範 |
神経内分泌マーカー
chromogranin A synaptophysin CD56 |
必須ではない* | 必須ではない* | 必須ではない* | 1種類以上陽性になることが必要 |
HPF:high-power filed。顕微鏡の対物レンズを40×にした場合の視野。
- *
- カルチノイド,小細胞癌は基本的に組織,細胞形態で診断される。通常カルチノイドでは神経内分泌マーカーは3種類とも陽性になることが多い。小細胞癌の診断には,神経内分泌マーカーおよびKi-67の染色が勧められる。
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓
https://www.haigan.gr.jp/guideline/2017/1/1/170101030100.html
呼吸器 問18.次のうち 誤っている ものはどれですか.
1.Pneumocystis jiroveciiは、球形や三日月状の形態をとる.
2.Cryptococcus は mucicarmine 染色陽性である.
3.Aspergillus nigerの感染ではシュウ酸カルシウム結晶が沈着する.
4.Mucor の菌糸は幅広く,しばしばねじれや屈曲を生じる.
5.Nocardiaは嫌気性 Gram 陽性の球菌である.
解説
回答:5
・Pneumocystis jirovecii・・・Pap染色では菌体が特徴的な泡沫状の球状集塊として認められる。グロコット染色では菌体は黒褐色に染色され、なかには嚢子壁の一部が括弧状(三日月状)構造として認められる。
・Cryptococcus・・・円形の淡い胞子を組織球に貪食されて認めることが多い。PAS反応、ムチカルミン染色が陽性。ギムザ染色、墨汁染色は莢膜が白く抜けて見える。
・Aspergillus nige・・・菌体の代謝産物であるシュウ酸とカルシウム結合し、空洞壁、壊死組織にシュウ酸カルシウム結晶が沈着するのが特徴的。黒色のカビ。
・Mucor・・・太くて薄い隔壁なない、ねじれのあるワカメ様の菌糸をみとめる。PAS反応、グロコット染色の染色性は弱い。
・Nocardia・・・好気性のグラム陰性桿菌。チール・ネルゼン染色に一部染まるため、抗酸菌性菌とも呼ばれる。ほとんどが日和見感染。
呼吸器 問19.大細胞神経内分泌癌について 誤っている ものはどれですか.
1.核縁が薄く,核線を伴う.
2.背景に壊死物質を認める.
3.核小体が明瞭に認められる.
4.ロゼット様構造がみられる.
5.核分裂像は目立たない.
解説
回答:5
大細胞神経内分泌癌の特徴
・男性、喫煙者に多い
・壊死性背景、核線、核濃縮細胞が見られる
・ロゼット構造、鋳型状に対細胞の形成
・明瞭な細胞質をもつもの、裸核状細胞も観察される
・核小体は1個もしくは数個みられる
・核分裂像が見られる
呼吸器 問20.定型的カルチノイドについて 誤っている ものはどれですか.
1.tumourlet とは腫瘍径により鑑別される.
2.免疫組織細胞化学的に CD56 が陽性を示す.
3.間質に骨や軟骨形成,アミロイド沈着を認める.
4.電顕的に高電子密度芯状顆粒が多数認められる.
5.核は Grimelius 染色で陽性を示す.
解説
回答:5
・tumourlet・・・中等度の細胞質を有する類円形または紡錘形の均一な大きさのカルチノイド腫瘍に似た細胞が、細気管支周囲に結節を作る。免疫染色により神経内分泌分化を示す。tumourletは腫瘍径が5mm未満であり、5mm以上の場合はカルチノイド腫瘍とする。
・定型カルチノイドは、細胞質がグリメリウス染色陽性となる。
呼吸器 問11~問20の解説は以上になります。
消化器 問1~問10の解説はこちらになります。↓