平成27年第48回

【解答(胸腹水編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問11-20)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は胸腹水・その他 問11~問20の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

胸腹水・その他(問11~問20)

胸腹水・その他 問11.甲状腺細胞診の報告様式(甲状腺癌取扱い規約第 6 版)において検体不適正の所見として正しいものはどれか.

1.コロイドのみ

2.泡沫細胞のみ

3.多数の炎症細胞

4.少数の濾胞上皮細胞のみ

5.少数の異型細胞のみ

解説

回答:4

がん取り扱い規約第6版からの出題。(現在、第7版が出ております。)

標本作製不良・・・乾燥、変性、固定不良、抹消血混入、塗抹不良など。また病変を推定するに足る細胞成分が採取されていない。コロイド、泡沫細胞、濾胞上皮、腫瘍細胞のいずれも全く認められていない、またはごく少量。

 

胸腹水・その他 問12.正しいものはどれか.

1.低異型度尿路上皮癌は局所再発しない.

2.自然尿は膀胱洗浄液に比べて細胞変性が少ない.

3.膀胱洗浄液には高異型度尿路上皮癌細胞は出現しない.

4.膀胱上皮内癌は平坦病変である.

5.尿膜管癌は膀胱頸部に発生することが多い.

解説

回答:4

・自然尿・・・継時的な細胞変性が起こる。尿浸透圧の変化、酵素による細胞分化に起因する。これらの変化は核濃縮、核萎縮、核崩壊、クロマチンの不明瞭化、細胞質空砲、細胞質破壊として見られる。

・膀胱洗浄液・・・排尿後、膀胱内にカテーテルを挿入し、50ml程度の生理食塩水で数回ポンピング操作により、新鮮な細胞が剥離されるので、細胞が多量に得られること、採取細胞が変性していないの特徴がある。非腫瘍成分を含め細胞は大きな集塊で出現する。一方で散在細胞の出現も多い。

・膀胱上皮内癌・・・非乳頭状非浸潤癌。尿中への腫瘍細胞の出現率は高く、尿細胞診が先行して陽性となることが多い。異型の強い腫瘍細胞が孤立散在性に多数出現する。

・尿膜管癌・・・尿膜管は膀胱ドームの上部とへその間に位置する胎児組織であり、尿膜管癌は尿膜管に沿ってどのような部位でも発生することができる。最も一般的な部位は、へそと膀胱ドームの上部である。

胸腹水・その他 問13.次のうち正しいものはどれか.

1.成人T細胞性白血病は東日本に多い.

2.Primary effusion lymphoma はT細胞性である.

3.バーキットリンパ腫は CD10 陰性である.

4.マントル細胞リンパ腫では,14 番染色体と 18 番染色体の転座がみられることが多い.

5.多発性骨髄腫細胞は CD138 陽性である.

解説

回答:5

成人T細胞性白血病・・・腫瘍ウィルスであるHTLV-1感染を原因とする白血病。独自の形態をもつ異型リンパ球(CD4陽性リンパ球)の単クローン性腫瘍である。日本では沖縄、南九州の西日本に多く、他はカリブ海沿岸諸国、中央アフリカ、南米などに感染者が見られる。

・Primary effusion lymphoma(原発性滲出性リンパ腫)・・・非ホジキンリンパ腫。腫瘍細胞が体腔液中に浮遊状態で存在し、どこにも原発巣としての腫瘤を作らないという特徴がある。カポジ肉腫の原因ウィルスとして知られるHHV-8の関与が示唆されているが、感染していなくても発症することがある。CD20などB細胞に特徴的なマーカーが陰性のことが多い。

こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

http://patho2.med.hokudai.ac.jp/study-theme/autopsy/pel/

・バーキットリンパ腫・・・c-myc遺伝子と免疫グロブリン遺伝子の相互転座によって生じる悪性リンパ腫。CD10、Bcl-6、MIB-1が陽性となる。

・マントル細胞リンパ腫・・・B細胞性悪性リンパ腫の1分類でt(11:14)(q13:q32)によるサイクリンD1の過剰発現で特徴づけられる。CD10、Bcl-6と言った胚中心マーカー陰性。Bcl-2は陽性。

・多発性骨髄腫・・・50に歳以上の高齢に多い。腫瘍性形質細胞の異常増加により、モノクローナルな異常ガンマグロブリン(M蛋白)を産生。異常産生されるグロブリン軽鎖蛋白であるベンスジョーンズ蛋白により腎障害も起こる。CD138陽性。M蛋白の一部が組織に沈着することで、アミロイドーシスを起こす。

 

 

 

胸腹水・その他 問14.悪性胸膜中皮腫について正しいものはどれか.

1.壁側胸膜より発生する.

2.両側性の胸水貯留を認めることが多い.

3.早期の段階から肺実質に結節性の病変を伴うことが多い.

4.多くの症例で p 16 遺伝子を含む 9 番染色体の短腕の増幅が認められる.

5.アスベストによる健康被害の救済給付対象となる指定疾病は,悪性中皮腫のみである.

解説

回答:1

悪性中皮腫・・・胸膜は2重の膜となっており、外側の胸壁を覆っている膜を壁側胸膜と呼び、内側の肺を覆っている膜を臓側胸膜と呼ぶ。壁側胸膜の中皮細胞から発生した悪性胸膜中皮腫は臓側胸膜に進展し、さらに近傍の組織やリンパ節、他の臓器に進展、移転していく。初発症状に乏しいことが多い。進行例では症状が強く出ることが多く、胸膜浸潤による胸水の貯留による呼吸困難が強く出てくる。胸水については片側、両側などの特徴はないようです。

悪性中皮腫では、p16遺伝子NF2遺伝子が高頻度に欠失する。

胸部CT検査では胸水貯留のみで、胸膜の肥厚や腫瘤を認めないことが多いが、ときとして壁側胸膜に不整肥厚や結節性病変を認めることもある。

アスベスト健康被害救済給付の対象・・・中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、びまん性胸膜肥厚。

 

胸腹水・その他 問15.腹膜上皮型中皮腫を卵巣漿液性腺癌から鑑別に最も有用なマーカーはどれか.

1.calretinin

2.WT1

3.D2-40

4.Ber-EP4

5.ER 16.

解説

回答:5

・腹膜中皮腫・・・アスベスト高濃度暴露と関連した男性に発症する例と、比較的年齢層が若い女性に発症するものがある。後者の場合、アスベスト暴露との関連が見られないことが多い。女性腹膜中皮腫は卵巣やいわゆる腹膜原発漿液性腺癌との鑑別が必要。

腹膜中皮腫:calretinin、D2-40

卵巣癌・腹膜原発漿液性腺癌:Ber-EP4、PAX8、CA19-9、LeuM1、ER

WTー1は中皮腫、卵巣癌ことに漿液性腺癌、腹膜偽粘液腫のいずれも高率に陽性。

ER は卵巣癌の 80-86%に陽性になるが、中皮腫は全例陰性 である。また、PAX8 は高異型度卵巣癌では 99%、低異型度の卵巣癌では 100%が陽性になるが、上皮型中皮腫では全例陰性である。よって上記の問題はERが鑑別に有用であるといえる.

胸腹水・その他 問16.次のうち 誤っている ものはどれか.

1.前立腺癌の分類にグリソン(Gleason)分類がある.

2.p63 は前立腺癌の診断に有用である.

3.集合管癌は腎髄質から発生する.

4.膀胱の非浸潤性乳頭状尿路上皮癌の T 分類は pTis である.

5.腎細胞癌が自然尿中に出現するのはまれである.

解説

回答:3

・集合管癌・・・ベリニ管癌とも。集合管癌は髄質の集合管に由来し稀である。この腫瘍は全ての年齢に発生するが若年者に発生する傾向がある。

胸腹水・その他 問17.膠芽腫の所見で 誤っている ものはどれか.

1.円形核

2.壊死

3.核分裂像

4.柵状配列

5.血管増生

解説

回答:1

膠芽腫・・・高齢者に多く、成人グリオーマの40%と頻度が高く、最も悪性度が高い腫瘍です。

組織像は、高い細胞密度を示し、核異型の強い腫瘍細胞がびまん性に増殖浸潤している。核分裂は豊富、大小の壊死巣、核の偽柵状配列を伴う壊死、微小血管の増殖が見られる。

胸腹水・その他 問18.尿細胞診について 誤っている ものはどれか.

1.尿路結石患者の尿中には,核濃染する尿路上皮細胞がみられる.

2.高異型度尿路上皮癌では異型細胞が核偏在性を示す.

3.上皮内癌は低異型度であることが多い.

4.尿路上皮癌では pair cell がみられる.

5.ウイルス感染細胞は高異型度尿路上皮癌との鑑別を要する.

解説

回答:3

・上皮内癌・・・非乳頭状非浸潤癌。尿中への腫瘍細胞の出現率は高く、尿細胞診が先行して陽性となることが多い。一般に乳頭状腫瘤のG2~G3に相当する細胞所見を示すが、典型的な細胞像といったものがない。しかし、大型の細胞集塊で出現することはほとんどなく、異型の強い腫瘍細胞が孤立散在性に多数出現する。

胸腹水・その他 問19.乳腺について 誤っている ものはどれか.

1.小葉癌と乳管癌の鑑別には E-cadherin が有用である.

2.CD10 は筋上皮細胞のマーカーとして知られている.

3.分泌癌の診断には casein が有用である.

4.HER2 の発現は非浸潤性乳管癌も対象とする.

5.Ki-67/MIB-1 の標識率は乳癌治療の選択に用いられる.

解説

回答:4

・HER2・・・浸潤性乳癌および転移性乳癌が対象となる。

胸腹水・その他 問20.次のうち 誤っている 組み合わせを選びなさい.

1.濾胞性リンパ腫 ――――――――― bcl-2

2.マントル細胞リンパ腫 ―――――― cyclin D1

3.自己免疫性膵炎 ――――――――― IgG4

4.血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫 ―― CD3

5.古典的ホジキンリンパ腫 ――――― ALK

解説

回答:5

古典的ホジキンリンパ腫・・・古典的のおおよそが半数例でホジキン細胞にEBVが証明される。

HRS(Hodgkin/Reed-Sternberg)細胞が陽性:CD30、CD15

LP(lymphocyte predominant)細胞が陽性:CD20

※ALKは未分化大細胞リンパ腫から発見されたもの。

 

胸腹水・その他 問11~問20の解説は以上になります。

呼吸器 問1~問10の解説はこちらになります。↓

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