平成27年第48回

【解答(消化器編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問1-問10)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は消化器 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

消化器(問1~問10)

消化器 問1.口腔領域疾患について正しいものはどれですか.

A.扁平苔癬では強い壊死性背景を伴う.
B.悪性黒色腫は発生しない.
C.舌癌のリンパ節転移はまれである.
D.EBV は上咽頭癌の発生に関与する.
E.真菌症ではカンジダ症の頻度が最も高い.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

扁平苔癬・・・皮膚や口腔粘膜に生じる疾患。角化亢進が見られ棘細胞層の肥厚が見られる。病変は上皮下結合組織には帯状にリンパ球(キラーT細胞)が帯状に浸潤し、基底細胞は融解から消失まで種々の程度に障害され上皮と結合組織の境界が不明瞭となる。また上皮細胞には好酸性球状のシバッテ小体などを認めることがある。

悪性黒色腫・・・口腔領域における悪性黒色腫は口蓋や上顎歯肉に好発する。腫瘍の色調は黒褐色が一般的であるが、青色や赤色の混在や、色素沈着が明瞭ではないことがある。浸潤性増殖を示すものは早期に転移し予後も悪い。

舌癌・・・男女比では2:1とやや男性に多い。好発年齢50歳後半だが、20~30代の若年者にも時々見られる。舌癌の中には早期から頸部リンパ節転移を示すもの極めてたちの悪いタイプがある。

 

消化器 問2.唾液腺腫瘍のうち好発年齢の高いものはどれですか.

A.腺房細胞癌
B.粘表皮癌
C.多形腺腫
D.基底細胞腺癌
E.ワルチン(Warthin)腫瘍

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

疾患 年齢 性差
多形腺腫 幅が広いが平均40代 若年女性に多い
ワルチン腫瘍 60歳代 喫煙歴のある高齢男性
腺房細胞癌 若年者から高齢者まで 女性にやや多い
粘表皮癌 30~40歳代 若年女性に多い
腺様嚢胞癌 中年~高齢者 特になし
基底細胞腺癌 高齢者 特になし

 

 

消化器 問3.細胞診の Giemsa 染色で異染性を示す唾液腺腫瘍はどれですか.

A.多形腺腫 1
B.ワルチン(Warthin)腫瘍
C.粘表皮癌
D.腺房細胞癌
E.腺様嚢胞癌

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

・選択肢以外でギムザ染色にてメタクロマジーが見られる疾患

基底細胞腺腫、筋上皮腫、上皮筋上皮癌、多形腺腫由来癌、基底細胞腺癌など。

 

消化器 問4.大腸疾患について正しいものはどれですか.

A.クローン病では乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める.
B.潰瘍性大腸炎は偽膜を形成する.
C.腸結核の診断には Ziehl-Neelsen 染色が有用である.
D.虚血性大腸炎は左側結腸に好発する.
E.アメーバ赤痢の診断には Grocott 染色が有用である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

クローン病・・・形質細胞主体の慢性炎症細胞巣が不連続的に見られる。縦走する潰瘍部とその周囲には全層性にリンパ球集簇層が見られる。壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が特徴的である。

潰瘍性大腸炎・・・好中球や好酸球を伴う慢性炎症細胞浸潤が粘膜全層性、びまん性に認められる。粘膜深部で形質細胞浸潤が目立つ。上皮の粘液減少と腺管のねじれを伴う。びらんや潰瘍、陰窩膿瘍、陰窩炎が活動性の指標となる。

アメーバ赤痢・・・アメーバ性大腸炎およびアメーバ性肝膿瘍の確定診断はアメーバ虫体を検出することにある。栄養体の大きさは15~30μm程度。PAS反応では胞体内のグリコーゲンが染色され強い赤紫色を呈す。その他の染色は、ヨード・ヨード化カリ染色Heidenhain鉄ヘマトキシリン染色Kohn染色などがある。

 

消化器 問5.大腸病変について癌化と関係の深いものはどれですか.

A.絨毛腺腫
B.過形成性ポリープ
C.若年性ポリープ
D.炎症性ポリープ
E.家族性大腸腺腫症

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

【癌化の可能性が高い】

腺腫:管状、絨毛管状、絨毛、鋸歯状がある。絨毛腺腫が一番高い。

家族性大腸ポリポージス:若年性、多発、優性遺伝

ガードナー症候群:骨腫と線維腫を合併、優性遺伝

ポイツーシェガース症候群:口唇に黒色母斑、優性遺伝

 

【癌化の可能性が低い】

・クロンカイトカナダ症候群:色素沈着、爪の萎縮、脱毛、遺伝性なし

・若年性ポリープ

・過形成ポリープ

 

消化器 問6.胆汁中の再生上皮の細胞像として正しいものはどれですか

A.核形不整が強い.
B.不規則な重積細胞集塊を形成しやすい.
C.比較的均一な大型核小体を認める.
D.核間距離が均等なシート状集塊として出現する.
E.集塊辺縁に細胞質はみられない.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

 

胆汁中の再生上皮の細胞像

・シート状細胞集塊で出現または重積性があっても配列は規則正しい

・細胞集塊辺縁の細胞質が保たれている

・核形に不整がない

・クロマチンは疎で均一な分布

・核小体は目立つことがあるので注意

 

消化器 問7.肝胆膵疾患について正しいものはどれですか.

A.肝内胆管癌の多くは肝硬変症を合併している.
B.胆管内乳頭状腫瘍では多量のアミラーゼ産生がみられる.
C.糖尿病は膵癌の危険因子である.
D.膵癌は K-ras 遺伝子変異と関連がある.
E.膵・胆管合流異常症は膵癌の危険因子である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

・肝内胆管癌・・・肉眼的分類では腫瘤形成型胆管浸潤型胆管内発育型がある。男女比では男性にやや多く、50~70歳代に多い。肝硬変に伴って発生することが多く、肝細胞癌とは異なり、肝内胆管癌の多くは正常肝に発生する。

胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)・・・胆管内腔へ向かって乳頭状もしくは低乳頭状の組織所見を示す胆管上皮の腫瘍を包括する疾患概念。性差はほとんどない。膵臓のIPMNと同様な感じ。約1/3の症例で粘液の過剰酸性を認める。

・膵・胆管合流異常症・・・胆管と膵管が十二指腸壁外で合流する先天性の奇形で、合流部の括約筋【oddi筋】の作用が及ばないため、膵液と胆汁が相互に逆流し、胆管炎、胆石形成、閉塞性黄疸、急性膵炎などの様々な病態を引き起こす。

 

消化器 問8.膵粘液性嚢胞腫瘍について正しいものはどれですか.

A.膵液細胞診での診断は容易である.
B.卵巣様間質を認める.
C.膵尾部に好発する.
D.中年男性に好発する.
E.悪性病変は含まない.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

膵粘液性嚢胞腫瘍・・・日本では95%以上が女性で、40~50歳代の膵体尾部に好発する。主膵管の交通や嚢胞間相互の交通は通常ない。浸潤癌の頻度は15%未満と低く、術後の予後は良好。粘液性嚢胞腺腫と粘液性嚢胞腺癌がある。組織像は立方状から高円柱状の粘液性・非粘液性の上皮細胞と、その上皮下に卵巣様間質と呼ばれる細胞密度の高い紡錘形核の間質細胞よりなる。

 

 

消化器 問9.消化器細胞診検体で感染症法に基づく届出が必要な病原体はどれですか.

A.Mycobacterium tuberculosis
B.Cryptosporidium
C.Toxoplasma gondii
D.Epstein-Barr virus
E.Cytomegalovirus

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

感染症法・・・保健所に届け出るべき感染症が定められている。

2類感染症:結核

3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌、チフス

4類感染症:アメーバ赤痢、ウィルス性肝炎、クリプトスポリジウム

 

 

消化器 問10.Helicobacter pylori について 誤っている ものはどれですか.

A.MALT リンパ腫との関連性が高い.
B.ウレアーゼ活性によりアンモニアを産生する.
C.グラム陽性の棍棒状菌である.
D.腸上皮化生粘膜に多く存在する.
E.経口感染と考えられている.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

ヘリコバクターピロリ・・・人の胃に生息しており、グラム陰性微好気性細菌、らせん型をしている。ウレアーゼを産生しており、この酵素により胃液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで局所的に胃酸を中和することによって胃へ定着している。感染経路は不明ではあるが、胃に定着することから糞便から口感染の経口感染が推測される。慢性胃炎、MALTリンパ腫、胃潰瘍などの発生につながることが報告されている。

 

消化器 問1~問10の解説は以上になります。

消化器 問11~問20の解説はこちらになります。↓

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