こんにちは!
あすはやです。
平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は消化器 問11~問20の解説を行います。
学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!
Contents
- 消化器(問11~問20)
- 消化器 問11.胆道疾患について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問12.超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNAC)について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問13.唾液腺について正しいものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問14.耳下腺以外の唾液腺に好発する腫瘍はどれですか.
- 解説
- 消化器 問15.食道疾患について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問16.胃癌の術中腹腔洗浄細胞診について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問17.肝臓について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問18.肝細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問19.膵管内乳頭状粘液性腫瘍について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
- 消化器 問20.膵内分泌腫瘍について 誤っている ものはどれですか.
- 解説
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- 関連
消化器(問11~問20)
消化器 問11.胆道疾患について 誤っている ものはどれですか.
A.原発性硬化性胆管炎は胆管癌の発生に関連がある.
B.胆管内上皮内腫瘍の BilIN-1 は軽度異形成に相当する.
C.胆管内乳頭状腫瘍は粘液を産生しない.
D.肝外胆管癌は十二指腸乳頭部癌より予後は良好である.
E.カルチノイド腫瘍は神経内分泌腫瘍の G1 に含まれる.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:4
・原発性硬化性胆管炎・・・胆管の線維状狭窄を生じる進行性の慢性炎症性疾患で、胆汁うっ滞をきたす原因不明の疾患。成人男性に発症することが高く、約半数で潰瘍性大腸炎を合併。また画像的にも胆管では多数の狭窄像が見られ、連珠状所見を認める。胆管癌を合併することもある。
・胆管内上皮内腫瘍・・・前癌病変。BilINは平坦で微小な病変で、微小乳頭状増殖、核の偽重層、核密度の増加、核腫大、濃染を特徴とする。BilINー1は軽度異型性形成、BilINー2は中等度異型性形成、BilINー3は高度異型性~上皮内癌に相当する。
・胆管内乳頭状腫瘍は問7を参考にして下さい。
・肝外胆管癌・・・肝外胆管上皮から発生し、60~70歳代に好発。リスクファクターとしては、原発性硬化性胆管炎、胆管炎、潰瘍性大腸炎、膵管・胆管合流異常、総胆管嚢腫が知られている。肝臓に近いほど悪性度が高い。十二指腸乳頭部癌は、胆膵管末端のOddi括約筋に囲まれた部位に発生する悪性腫瘍で、膵管癌・肝外胆管癌・胆嚢癌に比べて発生頻度が低い。
消化器 問12.超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNAC)について 誤っている ものはどれですか.
A.消化管粘膜下腫瘍の診断には有用でない.
B.合併症には出血や感染がある.
C.セルブロックを用いた免疫染色は補助的診断に有用である.
D.膵内分泌腫瘍の診断に適している.
E.Solid-pseudopapillary neoplasm と膵内分泌腫瘍の細胞学的鑑別は容易である.
1:A B
2:A E
3:B C
4:C D
5:D E
解説
回答:2
・EUS-FNA・・・胃や十二指腸の消化管から超音波内視鏡で胸腹部や骨盤内の腫瘤を観察し、消化管内から針を刺して組織を採取する方法。胃粘膜下腫瘍、十二指腸腫瘍、小腸腫瘍、膵臓腫瘍、胆管腫瘍、胆のう腫瘍、肝臓腫瘍、腹腔内リンパ節、腹腔内腫瘍、骨盤内腫瘍、腹水、食道腫瘍、縦郭腫瘍、縦郭リンパ節などの組織、細胞を採取して即座に診断可能な診断法。
・Solid-pseudopapillary neoplasmと膵内分泌腫瘍の細胞像は、一目で区別がつきません。組織診で免疫染色などを用いて診断をつけることが有用であるようです。
消化器 問13.唾液腺について正しいものはどれですか.
1.大中小の唾液腺に分類される.
2.耳下腺は漿液性と粘液性からなる混合腺である.
3.顎下腺は粘液性細胞からなる.
4.耳下腺,顎下腺,口唇腺を3大唾液腺と呼ぶ.
5.粘液嚢胞は唾液腺の排泄導管の破綻により生じる.
解説
回答:5
・唾液腺・・・耳下腺、顎下腺、舌下腺の大唾液腺と口腔粘膜内に広く分布する小唾液腺に分けられる。
耳下腺:漿液腺(漿液細胞からなる)
顎下腺、舌下腺:漿液腺と粘液腺の混合腺。(漿液細胞と粘液細胞からなる)
消化器 問14.耳下腺以外の唾液腺に好発する腫瘍はどれですか.
1.多形腺腫
2.ワルチン(Warthin)腫瘍
3.基底細胞腺癌
4.腺房細胞癌
5.腺扁平上皮癌
解説
回答:5
・耳下腺に発生しやすい腫瘍:多形腺腫、ワルチン腫瘍、基底細胞腺腫、筋上皮腫、腺房細胞癌、粘表皮癌、上皮筋上皮癌、唾液腺同館癌、基底細胞腺癌
・小唾液腺に発生しやすい腫瘍:腺様嚢胞癌
・腺扁平上皮癌は、子宮頸部、肺、胆管など様々な部位に発生する。
消化器 問15.食道疾患について 誤っている ものはどれですか.
1.早期癌は壁深達度が粘膜内にとどまり,リンパ節転移の有無は問わない.
2.バレット(Barrett)食道は腺癌の発生母地となる.
3.GIST が好発する.
4.顆粒細胞腫では PAS 反応陽性顆粒を認める.
5.食道癌は胸部中部食道に好発する.
解説
回答:3
・GIST・・・食道から直腸までの主として平滑筋層、粘膜筋板層に発生する。50~60歳代に多く、胃に発生することが多い。そのため、食道に好発するとは言えないため、選択肢3を誤りとした。ちなみに好発する部位で多い順に胃>小腸>大腸>食道である。
消化器 問16.胃癌の術中腹腔洗浄細胞診について 誤っている ものはどれですか.
1.疑陽性の場合は CY0 と記載する.
2.ダグラス窩より洗浄液を採取する.
3.シート状の中皮細胞を認める.
4.開腹直後に検査する.
5.CY1は肉眼的進行度(Stage)III に相当する.
解説
回答:5
・胃癌取り扱い規約・・・CYが癌の進行度分類、根治度の指標として組み込まれている。
CY0:癌細胞を認めない
CY1:癌細胞を認める
CYX:CYを行っていない
と3つに分けられる。CY1症例はstageⅣに分類する。偽陽性はCY0。
消化器 問17.肝臓について 誤っている ものはどれですか.
1.肝硬変の原因としてうっ血性心不全がある.
2.肝細胞は PAS 反応陽性である.
3.肝細胞は脂質を代謝する.
4.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)では,抗ミトコンドリア抗体が検出される.
5.慢性ウイルス性肝炎では門脈域にリンパ球主体の炎症細胞浸潤がみられる.
解説
回答:4
・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)・・・発生原因にアルコールが含まれないアルコール性肝障害に類似した進展を示す。発生に至る機序はまだはっきとわかっていない。脂肪肝に加え、肝臓になんらかのストレスがかかることにより、発生するのではないのかと言われている。ストレスは具体的には、活性酸素による酸化ストレス、過酸化脂質、鉄、インスリン抵抗性、サイトカイン放出などがある。鑑別死んだんのために抗ミトコンドリア抗体M2文画、抗核抗体、IgG4などを測定することもある。
消化器 問18.肝細胞癌について 誤っている ものはどれですか.
1.組織構造は索状型,偽腺管型,充実型,硬化型に分類される.
2.高分化型の核は小型均一である.
3.早期癌では偽小葉間結合織がみられる.
4.早期癌の大きさは通常 3cm 以下である.
5.早期癌と高度異型結節の細胞学的鑑別は困難である.
解説
回答:4
・早期肝癌・・・病理学的に再生結節の構造を大きく破壊しておらず、内部にグリソン鞘、偽小葉間結合を含む結節性病変で一部にEdomondson分類のGradeⅠあるいはⅡからなる高分化肝細胞癌を内包しているものをさす。大きさは、ほとんどのものが2cm以下である。
消化器 問19.膵管内乳頭状粘液性腫瘍について 誤っている ものはどれですか.
1.非乳頭状腫瘍もみられる.
2.厚い被膜を有する.
3.胆膵型は胃型より悪性度が高い.
4.膵液細胞診では種々の大きさの細胞集塊が出現する.
5.亜型分類には MUC 染色が有用である.
解説
回答:2
・膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMNs)・・・限局性隆起性のものが多いがびまん性平坦のものも存在する。組織学的には、高乳頭増殖、低乳頭増殖、完全平坦増殖を示すものがある。疾患名に【乳頭】と名前がついているが、組織学的に非乳頭増殖を示すものも含まれる。
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/28/2/28_141/_pdf/-char/ja
消化器 問20.膵内分泌腫瘍について 誤っている ものはどれですか.
1.細胞診による良悪性判定は容易である.
2.血管性間質がみられる.
3.インスリノーマは良性が多い.
4.多発性内分泌腫瘍(MEN)Ⅰ型に合併する.
5.核分裂数と Ki-67 陽性細胞数を指標として Grade 分類される.
解説
回答:1
・膵内分泌腫瘍・・・細胞診の像で良悪性の判別は難しい。ロゼット形成、索状、充実胞巣状配列、インディアンファイル状配列、ごま塩状クロマチン等の項目を観察する。
神経内分泌腫瘍
神経内分泌細胞へ分化を示す腫瘍。30~60歳代と幅広い層に発生する。神経内分泌細胞に由来する腫瘍は、神経内分泌がん(NEC: Neuroendocrine carcinoma)と神経内分泌腫瘍(NET: Neuroendocrine tumor, NET G1/G2)に分類されます。NECの病理診断では、核分裂像とKi 67指数が重要です。これらの指標を用いて、2010年WHO分類に基づき、NET G1/G2と区別されています。
こちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_carcinoma/index.html
消化器 問11~問20の解説は以上になります。
婦人科 問1~問10の解説はこちらになります。↓