平成27年第48回

【解答(総論編)】平成27年第48回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)

こんにちは!

あすはやです。

平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は総論 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

総論(問1~問10)

総論 問1.正しい組み合わせはどれか?

A アスベスト小体_________悪性胸膜中皮腫

B シャルコー・ライデン結晶____ウェゲナー肉芽腫症

C クルシュマン螺旋体________肺過誤腫

D 石灰化小体___________小細胞癌

E ラングハンス巨細胞_______肺結核

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

アスベスト小体・・・鉄アレイ状の形でPap染色では黄褐色または黄緑色に染まり、HE染色では、黄褐色に染まる。アスベスト小体はアスベスト繊維が鉄とタンパクで覆われたものである。鉄含有のため、ベルリン青染色で青色に染まる。関連疾患は悪性中皮腫、石綿肺、肺がんなどがある。

シャルコー・ライデン結晶・・・ひし形八面体の形状をしており、Pap染色では黄褐色またはライトグリーンに染まる。関連疾患は喘息、肺吸虫症など。

クルシュマン螺旋体・・・形状は螺旋状でヘマトキシリンに染まり濃い紫色をしている。関連疾患は喘息、気管支炎、肺結核などに見られる。

石灰化小体・・・層状の形状であり、ヘマトキシリンに染まり濃い紫色をしている。関連疾患は乳頭状腺癌、肺結核などで見られる。

ラングハンス巨細胞・・・豊富な細胞質、核は細胞質の周辺に馬蹄形ないし花冠状に配列している。関連疾患は結核、サルコイドーシスなど。

 

総論 問2.肝臓の血液の流れについて正しい組み合わせはどれか?

A 肝動脈→小葉間動脈→中心静脈→肝静脈

B 肝動脈小葉間静脈→中心静脈→肝静脈

C 肝動脈→中心静脈→小葉間静脈→肝静脈

D 門脈→小葉間動脈→中心静脈→肝静脈

E 門脈→小葉間静脈→中心静脈→肝静脈

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

肝動脈→小葉間動脈→類洞と合流→中心静脈→介在静脈→肝静脈

門脈→小葉間静脈→類洞→小葉間動脈と合流→中心静脈→介在静脈→肝静脈

詳しくはこちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

看護roo!ナースなみんなのコミュニティ

 

総論 問3.正しい組み合わせはどれですか?

A 多形腺腫___混合性腫瘍_____仙骨

B 奇形腫____胚細胞性腫瘍____縦郭

C 横紋筋肉腫__非上皮性悪性腫瘍__膀胱

D 過誤腫____悪性混合性腫瘍___肺

E カルチノイド__神経内分泌腫瘍__骨

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

多形腺腫・・・唾液腺腫瘍の中で最も高頻度に見られる良性腫瘍。好発年齢30歳~50歳代で、若干女性に多い。耳下腺、顎下腺、口蓋腺の好発。組織像は腺管細胞を筋上皮細胞が取り囲む2層性の構造を示す。間質は粘液腫瘍様、軟骨様ないし繊維硝子化を呈するため多彩な像を示す。

奇形腫・・・2胚葉あるいは3胚葉成分を有する高分化な胚細胞性腫瘍。発生の過程で卵黄嚢から性腺に移動する途中で迷入した胚細胞に由来するものが体の各部位に生じることがある。正中正面上、すなわち縦郭、松果体付近の頭蓋内、頚部などに発生することが多い。

横紋筋肉腫・・・小児で最も多い軟部肉腫である。全身のいかなる部位にも生じるが、頭頸部または泌尿生殖器に好発する。四肢では骨格筋に生じる。組織型的に胎児型、胞巣型、多形型の3つに分類される。

過誤腫・・・臓器や器官に固有の細胞や組織成分が臓器内で過剰に発育または過剰増殖することである。構成細胞は周囲の正常細胞と同一であり、成熟した細胞で占められる。良性腫瘍である。好発部位は肺。

カルチノイド・・・神経内分泌細胞から発生する神経内分泌腫瘍NET。好発する部位は胃腸管と肺がほとんど。

 

総論 問4.内胚葉、中胚葉、外胚葉発生について正しい組み合わせはどれですか?

A 下垂体後葉は外胚葉由来である。

B 副腎皮質は中胚葉由来である。

C 精巣は内胚葉由来である。

D 膀胱・尿道の上皮は外胚葉由来である。

E 心・血管は外胚葉由来である。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

外胚葉:表皮、爪、皮膚腺、内耳、水晶体、下垂体前葉、歯のエナメル質、乳腺、副腎髄質、色素細胞

内胚葉:消化器、呼吸器、咽頭、鼓室、甲状腺、膀胱、前立腺、尿道

中胚葉:血液、骨、結合組織、心臓、胸膜、腹膜、子宮、卵巣、精巣、副腎皮質、腎臓、尿管

 

 

総論 問5.背景にリンパ球の出現を特徴とするものはどれですか?

A 繊維腺腫

B 精上皮腫

C ワルチン腫瘍

D 甲状腺髄様癌

E 多形腺腫

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

繊維腺腫・・・細胞質が乏しくシート状あるいは、樹枝状に集塊が見られる。集塊内または周辺に筋上皮細胞の混在があり背景には多数の双極裸核細胞が介在している。

精上皮腫・・・淡明な細胞質と明瞭な細胞膜を有する大型の腫瘍細胞が散在性または疎な結合性を示して平面的な集塊を形成している。核は類円形、核小体は明瞭、核クロマチンは祖から顆粒状に濃染することが多い。背景には多数のリンパ球を認め2層性を示す。

ワルチン腫瘍・・・好酸性上皮細胞、リンパ球、および嚢胞内液の3種類の成分そろっていれば診断は容易である。いずれかの成分が欠落していると診断が難しくなる。

甲状腺髄様癌・・・背景にはコロイドは見られず、嚢胞変性を示す泡沫細胞もともなわない。アミロイド物質が約半数の症例に認められる。アミロイド物質はライトグリーン好性、無構造。腫瘍の結合性は弱く、疎な結合性を有して、あるいは孤立散在性に出現。各クロマチンはごま塩状で神経内分泌腫瘍と共通の所見であり、核小体は目立たない。

多形腺腫・・・唾液腺腫瘍の中で最も高頻度に見られる良性腫瘍。好発年齢30歳~50歳代で、若干女性に多い。耳下腺、顎下腺、口蓋腺の好発。ギムザ染色では背景のメタクロマジーを示す間質粘液が多量に見られ、上皮性細胞が緩い結合性を示し、シート状、腺管状に出現。筋上皮系細胞は多辺形から紡錘形など多様な形態を示す。

 

総論 問6.正しい組み合わせはどれですか?

A Coccidioides_____真菌

B Cryptosporidium__原虫

C Clostridium______真菌

D Entamoeba histolytica_細菌

E Chlamydia_______原虫

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

Coccidioides・・・地球上でもっとも病原性 の強い真菌である。輸入感染症の危険性が高まっていることで注目されている。多数の内生胞子を内蔵する球状態を形成する。

Cryptosporidium・・・ウシ、ブタ、ネズミなどの腸管寄生原虫である。

Clostridium_・・・偏性嫌気性で芽胞を形成するグラム陽性桿菌。ボツリヌス中毒(乳児がハチミツなどを食べることで発症するタイプが代表的)偽膜性大腸炎など原因菌。

Entamoeba histolytica・・・嫌気性のアメーバであり原虫。アメーバ赤痢を引き起こす病原体。

Chlamydia・・・グラム陰性偏性細胞内寄生性の真性細菌。性感染症の一つであるクラミジア感染症の原因とされ、女性が感染した場合は、治療せずに放置してしまうと子宮外妊娠や不妊症につながる危険性がある。

 

総論 問7.細胞死について、正しい組み合わせはどれですか?

A アポトーシスは細胞集団として認識されることが多い。

B アポトーシスは放射線障害が見られる。

C ネクローシスは凝固壊死と融解壊死がある。

D アポトーシスは結核でしばしば認められる。

E ネクローシスでは細胞質が好塩基性となる。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

アポトーシス・・・あらかじめ細胞の死が予定されているもの(生理的な細胞死)。核のクロマチンの凝集、縮小と断片化が起き、やがて細胞質も縮小し、断片化した核を少量の細胞質で取り囲んだアポトーシス小体が形成される。そして周囲の細胞や食細胞に取り込まれる。アポトーシスは細胞膜が強い障害を受けないため細胞内酵素の遊出が起きず、炎症反応を起こさない。

 

アポトーシスには放射線誘発アポトーシスがあり、放射線照射後、分裂を介さずに起こる間期死型、数回の分裂を経て起こる増殖死型がある。

詳しくはこちらのサイトを参考にしてみて下さい。↓

一般財団法人 高度情報科学技術研究機構

ネクローシス・・・細胞障害が高度である場合に起き、細胞内の分解酵素の活性化によってタンパク質の分解、変性、凝固が生じる。凝固壊死(結核でみられる乾酪壊死)、融解壊死(脂質成分の多い脳などでみられる)の2つがある。HE標本では核が消失し、好酸性の組織像が見られる。

 

総論 問8.細胞内小器官と機能で誤っている組み合わせどれですか?

A ライソゾーム___加水分解酵素を含む

B ミトコンドリア__エネルギー産生

C ゴルジ体_____物質産生に関与

D 粗面小胞体____ステロイドホルモン合成

E 滑面小胞体____タンパク質の合成

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

ライソゾーム(リソソームとも言う)・・・ゴルジ体から分離した小胞で加水分解酵素を含んでいる。この酵素タンパクは粗面小胞体で合成され、ゴルジ体に送られ一次ライソゾームを形成する。細胞外または細胞内の異物と一次ライソゾームが融合したものが二次ライソソームという。

ミトコンドリア・・・内膜(クリステと呼ばれる)と外膜の二重構造をもつ。細胞のエネルギー産生を行う場所でもあり、カルシウムイオンの貯蔵庫としての役割もある。

ゴルジ体・・・扁平な袋状構造が多数積み重なったような形をしている。粗面小胞体で合成されたタンパク質はゴルジ装置で糖鎖を付加する。そして、糖鎖を付加されたタンパク質は分泌されたり、細胞膜あるいはライソゾームなどに輸送される。

粗面小胞体・・・リボソームが付着している嚢状、管状の構造物。分泌タンパク質、膜タンパク質が合成される。

滑面小胞体・・・リボソームの付着がない嚢状、管状の構造物。脂質合成が行われ、トリグリセリド、コレステロール、ステロイドホルモンの合成なども行われている。また肝臓の粗面小胞体には、薬物代謝酵素群が豊富にあり薬物の代謝、解毒などを行っている。

 

総論 問9.誤っている組み合わせどれですか?

A EBV_____NK/Tリンパ腫

B HTLVー1__成人T細胞性白血病/リンパ腫

C HPV_____子宮内膜癌

D CMV_____咽頭癌

E HHV-8___カポジ肉腫

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

EBV・・・ヘルペス科ウィルス(HHV-4)であり、キス病と言われる伝染性単核症の原因ウィルスとして有名である。悪性リンパ腫、胃癌、上咽頭癌、平滑筋肉腫、唾液腺癌といった種々の癌を引き起こす。鼻型節外性NK/Tリンパ腫、アグレッシブNK細胞白血病においては、ほぼ100%EBV陽性となっている。

HTLVー1・・・レトロウィルスの一つ。成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)の原因ウィルスであり、母子感染、性感染および輸血により感染する。核が花びら様の異常リンパ球が見られることがある。

HPV・・・パピローマウィルス科の一つ。尖圭コンジローマ、子宮頸癌の原因ウィルスとされている。高いリスク群として特にHPV16、18型がある。

CMV・・・ヘルペス科ウィルス(HHV-5)。網膜炎、肺炎、髄膜炎、腸炎の原因ウィルス。

HHV-8・・・ヘルペス科ウィルス。カポジ肉腫、悪性リンパ腫の発症と関連している。

 

総論 問10.がんの部位別死亡率で誤っている組み合わせどれですか?

A 肺癌は男女共に増加傾向にある。

B 胃癌は男女共に減少傾向にある。

C 大腸癌は男女共に減少傾向がある。

D 女性の乳癌は増加傾向にある。

E 肝臓癌は男女共に減少傾向にある。

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

この問いの回答については、年度により部位別死亡率は変化しますので、組み合わせの中に回答が当てはまらなくなる場合があります。そのためA~Eを、一つずつ解説していきたいと思います。(平成31年2月現在)

A 2007年~2017年のデータで見てみると、肺癌の死亡率は少しづつ増加しています。正解。

B 2007年~2017年のデータで見てみると、男女共に緩やかに減少してきいますので、正解。

C 2007年~2017年のデータで見てみると男女共に増加傾向ですので不正解。

D 2007年~2017年のデータで見てみると女性の乳癌は増加傾向にありますので正解。

E 2007年~2017年のデータで見てみると肝臓癌は男女共に減少傾向なので正解。

こちらのサイトを参考にしました。↓

国立がん研究センター がん情報サービス がん統計・登録

総論 問1~問10の解説は以上になります。

総論 問11~問20の回答はこちらになります。↓

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