こんにちは!
あすはやです。
平成27年度 第48回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は総論 問11~問20の解説を行います。
学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!
Contents
総論(問11~問20)
総論 問11.核に陽性所見を示す抗体を一つ選びなさい。
1 E-cadherin
2 EGFR
3 HER2
4 HMB45
5 TTF-1
解説
回答:5
・E-cadherin・・・細胞膜が染まる。細胞表面に存在するカルシウム依存性の上皮細胞の接着分子。癌の転移能の獲得に伴い機能が低下するため、癌細胞の間の接着の低下が起こり、細胞像では疎な結合性または結合性が無い像が見られる。
・EGFR・・・細胞膜が染まる。細胞膜に存在し、チロシンキナーゼ受容体ファミリーの一つ。抗EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の適応判定に用いる。
・HER2・・・細胞膜が染まる。細胞表面に存在する糖タンパクで、正常細胞において細胞の増殖、分化などに関与している。乳癌、胃癌分子標的治療薬の適応判定に用いる。
【補足】分子標的治療薬・・・従来の抗がん剤は癌細胞の障害を狙うのに対して、分子標的治療薬は細胞増殖に関わる分子を阻害する。
・HMB45・・・細胞膜が染まる。プレメラソームに存在する糖タンパク。悪性黒色腫、明細胞肉腫、血管脂肪肉腫、PEComaなどの診断に用いられる。ちなみにHMBはhuman melanin blackの略である。
・TTF-1・・・核が染まる。転写因子として働き、甲状腺、抹消肺の上皮細胞の核に存在する。甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、肺癌、小細胞癌で高確率で陽性。
総論 問12.がん抑制遺伝子を1つ選びなさい。
1 BRCA-1
2 CyclinD1
3 erb-B2
4 myc
5 ras
解説
回答:1
・BRCA-1・・・癌抑制遺伝子の一つ。BRCA-1遺伝子の変異により乳癌や卵巣癌を起こす(遺伝子性乳癌卵巣癌症候群)。米国で、この変異遺伝子キャリアの人は予防的切除が任意で行われており、女優のアンジェリーナジョリーがリスク低減のために切除したことで話題になった。
・CyclinD1・・・細胞周期に関与する。マントル細胞リンパ腫のt(11;14)(q13;q32)の転座の11番染色体切断点近傍からクローニングされたもので、マントル細胞リンパ腫を診断する上で重要である。
・erb-B2・・・癌遺伝子であり、HER2とも言われる。ヒト上皮成長因子受容体ファミリーの一つ。
・myc・・・転写調節因子として機能する癌遺伝子産物としてバーキットリンパ腫に初めて同定された。
・ras・・・癌遺伝子。Ratの肉腫から見つかったのでras(rat sarcoma)と言われ、転写や細胞増殖、アポトーシスの抑制などに関与。
総論 問13.悪性腫瘍はどれか1つ選びなさい。
1 髄膜腫
2 血管芽腫
3 膠芽腫
4 下垂体腺腫
5 神経鞘腫
解説
回答:3
・髄膜腫・・・ほとんど良性腫瘍だが10%は悪性である。大脳鎌、脳底など、髄膜のある領域であればどこでも発生する。渦巻状構造、砂粒体形成を特徴とする。
・血管芽腫・・・良性腫瘍。多発部位は小脳で、成人に多い腫瘍です。脳と脊髄の血管芽腫が多発した時にフォン・ヒッペル・リンドウ病と呼ばれる遺伝性疾患が疑われます。
【補足】von Hippel-Lindau病フォン・ヒッペル・リンドウ病・・・VHLと呼ばれVHL腫瘍抑制遺伝子の変異によって起こります。小脳や脊髄の血管芽腫のほかに、網膜の血管芽腫、腎嚢腫や腎細胞癌、副睾丸嚢腫などのいくつかの疾患が合併することが特徴です。
・膠芽腫・・・悪性腫瘍。成人の大脳半球、小児では脳幹と小脳に発生する腫瘍。肉眼的に壊死、出血が著名。
・下垂体腺腫・・・良性腫瘍。下垂体前葉細胞から発生し、成人女性に多い。腫瘍から分泌されるホルモンが確認できた場合、機能性腺腫といい、ホルモン産生が無い場合は非機能性腺腫と呼ばれる。
・神経鞘腫・・・良性腫瘍。シュワン細胞から発生する腫瘍で、好発部位は三叉神経、聴神経、脊髄神経である。核の柵状配列が特徴的なAntoniAパターン、水腫状基質に細胞が疎に分布するAntoniBパターンがある。
総論 問14.誤っている組合わせはどれですか。
1 GIST_____カハール介在細胞_____c-kit
2 PEComa____平滑筋細胞________CD45
3 NET_________内分泌細胞________ソマトスタチン受容体
4 MEN2型___C細胞___________CEA
5 MALTリンパ腫___濾胞辺縁帯細胞____CD20
解説
回答:2
・GIST・・・紡錘形細胞よりなる非上皮性腫瘍、消化管間質腫瘍の略である。消化管の筋層内に存在する蠕動運動をつかさどるカハール介在細胞への分化を示し、c-kit遺伝子変異を有する。免疫染色ではc-kit、CD34が陽性。
・PEComa・・・血管周囲類上皮細胞腫(perivascular epithelioid cell tumor)の略で、非常に珍しい間葉系腫瘍である。腎臓、肝臓をはじめ大網、後腹膜、腹壁、子宮などに発生。組織像は好酸性または淡明な胞体を有する卵円形もしくは紡錘形細胞の血管周囲性の増殖が見られる。半数以上において多核の巨大な腫瘍細胞をみとめる。免疫染色はHMB45、αーSMAが陽性、S-100が陰性。
・CD45・・・分化した造血細胞表面上に存在する。未分化大細胞リンパ腫、悪性リンパ腫で陽性。
・NET・・・神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)。全身の臓器に発生する。近年ではソマトスタチンを用いて診断、治療を行っている。
【補足】消化器領域では以前カルチノイドと言われていましたが現在では、臓器に問わずNETという名称に変更されました。しかし肺、気管支領域では消化器NETとは違い、カルチノイドと神経内分泌癌の2つに大きく分けられています。
こちらのサイトを参考にしてください。↓
・MEN・・・多発性内分泌腫瘍症(Multiple Endocrine Neoplasia ) 。主に内分泌臓器が冒される病気である。MEN1型、MEN2型、MEN2B型の3つに分けられる。MEN1型は腫瘍抑制遺伝子MEN1の、2型は癌遺伝子RETの変異が原因である。
【補足】
MEN1型:副甲状腺機能亢進症、尿路結石、下垂体腫瘍や膵消化管腫瘍では過剰に分泌されるホルモンによる臨床症状(先端巨大症、クッシング病、無月経、消化性潰瘍、低血糖など)を認める。
MEN2型:褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症、甲状腺髄様癌などを認める。C細胞は甲状腺髄様癌の発生母地であり、セロトニン、ACTH、CEAを産生する。
総論 問15.誤っているものを1つ選びなさい。
1 膀胱癌は乳頭状発育を示す表在性癌が多い。
2 尿路上皮癌は膀胱内のみならず、腎盂や尿管にも発生する。
3 表在性膀胱癌は予後不良である。
4 染料労働者に職業性膀胱癌が発生しやすい。
5 膀胱上皮内癌は高異型度が多い。
解説
回答:3
・尿路上皮癌・・・腎盂、尿管、膀胱、尿道に発生する癌で、最も発生頻度が高い癌が膀胱癌である。症状として無症候性血尿、排尿時痛、排尿困難などがあげられる。
・膀胱癌・・・尿路上皮が癌化することで起こり、筋層非浸潤性膀胱癌、筋層浸潤性膀胱癌の2つに大きく分けられる。
筋層非浸潤性膀胱癌には、表在性癌(膀胱癌の70%を占めており、悪性度が低くカリフラワー状の乳頭状の形状をしており、膀胱の内腔に向かって突出している。予後は良い。)と膀胱上皮内癌(隆起病変を作らず、悪性度が高い)がある。
筋層浸潤性膀胱癌は膀胱の筋層まで広がった癌で、癌の表面がきれいでカリフラワー状ではないことが多く、こぶのように隆起している形から粘膜がむくんでいるように見える形など様々である。膀胱の壁から外側に浸潤しやすく転移もしやすい。
膀胱癌の発生原因・・・喫煙が最大の原因であり、織物、染料、ゴム工場で使用されるアニリン色素、ナフチラミン、ベンチジンなどへの慢性的な接触も原因とされている。
総論 問16.誤っているものを1つ選びなさい。
1 von Hippel-Lindau病_____膀胱癌
2 Lynch症候群_________大腸癌
3 von Recklinghausen病____神経線維腫
4 家族性大腸ポリポーシス____大腸腺腫
5 Peutz-Jeghers症候群_____大腸ポリポーシス
解説
回答:1
・von Hippel-Lindau病・・・第3染色体にあるVHL遺伝子の変異が原因で起こる。90%が家族性で発生。中枢神経や網膜血管芽腫、腎臓の明細胞癌、腎細胞癌、褐色細胞腫精巣上体嚢胞、膵嚢胞、膵内分泌腫瘍が多発する常染色体優性の遺伝疾患。
・Lynch症候群・・・遺伝性非大腸ポリポーシス大腸癌ともいう。常染色体優性の遺伝性大腸癌。子宮癌、胃癌、小腸腫瘍、胆嚢癌、尿管癌、脳腫瘍、皮膚癌など多臓器における発癌も見られる。
・von Recklinghausen病・・・神経線維腫症Ⅰ型ともいう。カフェオレ斑、神経線維腫を主徴とし、NF1遺伝子の異常により発症する場合と、突然変異で生じる場合がある。
・家族性大腸ポリポーシス・・・家族性大腸腺腫症。常染色体優性遺伝で原因遺伝子はAPC遺伝子。大腸に多数のポリープが発生する。
・Peutz-Jeghers症候群・・・常染色体優性遺伝。19番染色体の短腕にあるセリン・セロトニンキナーゼが原因と考えられている。食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと口唇、口腔、指尖部を中心とする皮膚、粘膜の色素斑を特徴とする。
総論 問17.誤っているものを1つ選びなさい。
1 HTLV-1はレトロウィルス科に属する。
2 HCVはRNAウィルスである。
3 EBVはアデノウィルスである。
4 HPVはDNAウィルスである。
5 HIVはレトロウィルス科に属する。
解説
回答:3
・HTLV-1・・・レトロウィルス。成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症、HTLV-1ぶどう膜炎などの疾患を起こす。
・HCV・・・フラビウイルス科のRNAウィルス。C型肝炎の原因ウィルス。
・EBV・・・ヘルペスウイルス。伝染性単核症、バーキットリンパ腫などの原因に。
・HPV・・・パピローマウィルス科の2本鎖DNAウイルス。
・HIV・・・レトロウィルス科の1本鎖ウイルス。
総論 問18.細胞所見で誤っているものを1つ選びなさい。
1 扁平上皮癌細胞は腺癌細胞よりも孤立性出現の傾向がある。
2 上皮性悪性腫瘍細胞は通常二種以上の腫瘍細胞からなる。
3 乳頭状増殖は腺系悪性腫瘍でみられる場合が多い。
4 乳頭状構造では毛細血管を伴う。
5 濾胞構造は通常腺癌で見られる場合が多い。
解説
回答:2
1 扁平上皮癌と腺癌を比較して考えると、扁平上皮癌は平面的で腺癌よりは孤立性またはシート状に出現することがあり、腺癌は乳頭状やボール状に出現するのが特徴的なので、正しいとします。
2 上皮性悪性腫瘍細胞は上皮が悪性化したものであり、細胞の種類数で診断しているわけではないため不正解とします。
3 腺癌は乳頭状やボール状に出現するのが特徴的なので、正しいとします。
4 乳頭状構造では毛細血管が網目状に走行していることが見られるため、正しいとします。
5 卵巣癌、甲状腺癌で見られるため正しいとします。
総論 問19.がん抑制遺伝子について誤っているものを1つ選びなさい。
1 細胞の増殖に対して抑制的にはたらく。
2 1対の染色体にいわゆるツーヒットが起こることにより機能を失う。
3 家族性大腸ポリポーシス症候群ではAPC遺伝子の変異が見られる。
4 多発性内分泌腫瘍症Ⅰ型ではMEN1遺伝子の機能喪失が見られる。
5 点突然変異の検出法としてFISH法がある。
解説
回答:1
・がん抑制遺伝子・・・がんの発生を抑制する遺伝子。正常な細胞増殖を抑制することではなく、がん細胞の増殖を抑制する。2倍体の細胞において2つのがん抑制遺伝子が損傷する(ツーヒット)ことにより正常なタンパク質が作られなくなり癌化する。
・家族性大腸ポリポーシス・・・家族性大腸腺腫症。常染色体優性遺伝で原因遺伝子はAPC遺伝子。大腸に多数のポリープが発生する。
・多発性内分泌腫瘍症Ⅰ型(MENⅠ型)・・・腫瘍抑制遺伝子MEN1が変異することで起こる。
・FISH法・・・蛍光物質や酵素などで標識したオリゴヌクレオチドプローブを用い、目的の遺伝子とハイブリダイゼーションさせ蛍光顕微鏡で検出する方法。遺伝子のマッピングや染色体異常の検出などに用いられる。現在では点突然変異の検出はPCRが多く用いられている。
総論 問20.消化管の固有筋層で誤っているものを1つ選びなさい。
1 食道は内輪筋と外縦筋からなる。
2 胃は内輪筋、中斜筋、外縦筋からなる。
3 結腸は内輪筋と外縦筋からなる。
4 食道は横紋筋と平滑筋よりなる。
5 小腸は平滑筋よりなる。
解説
回答:回答がない。不適切問題。
・食道・・・口に近い上部食道部は横紋筋、胃に近い側の下部食道は平滑筋で構成されている。また筋層は、2層構造をしており、内側は輪走筋、外側は縦走筋である。
・胃・・・筋層は3層になっており、内輪筋、斜走筋、外縦筋からなる。また壁細胞は胃酸および内因子を分泌。主細胞はペプシンの前駆体であるペプシノゲンを分泌。
・結腸・・・筋層は2層に分かれており、内側が輪走、外側が縦走である。
・小腸・・・粘膜の下には平滑筋による層がある。
総論 問11~問20の解説は以上になります。
技術 問1~問10の解説はこちらになります。↓
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