平成28年第49回

【解答(技術編)】平成28年第49回細胞検査士試験過去問の解説(問1-10)

こんにちは!

あすはやです。

平成28年度 第49回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は技術 問1~問10の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

技術(問1~問10)

技術 問1.Papanicolaou 染色について正しいものはどれですか

A.ギルのヘマトキシリンには酸化剤として酸化第二水銀が含まれている.

B.EA50 にはオレンジ G,エオジン Y,ライトグリーンが含まれている.

C.分子量は大きい順にオレンジ G,エオジン Y,ライトグリーンである.

D.リンタングステン酸は選択的染色に関与すると考えられている.

E.透過性に優れた染色法で,細胞の重なりがあっても観察が可能である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

ギルのヘマトキシリンの組成・・・硫酸アンモニウム(酸化剤)、ヨウ素酸ナトリウム、エチレングリコール、氷酢酸

EA50の組成・・・

10%ライトグリーンSFyellowish水溶液

10%エオシンY水溶液

10%ビスマルクブラウンY水溶液

95%エタノール

リンタングステン酸

分子量・・・ライトグリーン>エオジン>オレンジGとなり、ライトグリーンが一番分子量が大きい。

技術 問2.ヘマトキシリン染色液について正しいものはどれですか.

A.ヘマトキシリンは水に易溶性である.

B.ヘマトキシリン染色液は酸性である.

C.アルミニウムへマテインラックスは負に荷電する核のリン酸基と結合する.

D.マイヤーのヘマトキシリンは退行性染色である.

E.色出し操作は蒸留水で行うことが望ましい.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

ヘマトキシリン・・・ヘマトキシリン染色の種類は大きく分けて2種類あり、進行性染色:マイヤー、リリーマイヤー 、退行性染色:カラッチ、ギル、ハリスがある。

正(+)に帯電しているため、組織内の負(-)に帯電している部分(リン酸基やカルボキシル基を多く含む部分…細胞核、他)に結合し、青紫色に染める。ヘマトキシリンは水に溶けにくく、アルコールに溶けやすい。

色だし・・・

・色だしで用いられるもの

流水水洗・温水・弱アルカリ水溶液(pH8~9)

 

・以下弱アルカリ水溶液で用いられるもの。

アンモニアの希薄水溶液・希薄70%アルコール溶液・炭酸リチウム水溶液

※水道水や蒸留水のpHは必ずしも一定ではないため、水洗の場合もpHに注意を払う必要がある。(水道水では6.8~7.3、蒸留水では4.4~5.3の範囲でpHが変異するといわれている)

 

技術 問3.Giemsa 染色について正しいものはどれですか.

A.細胞剥離が少ない.

B.細胞密度の高い標本や重積集塊の観察に適している.

C.封入前にアルコールによる脱水とキシレンによる透徹を行う.

D.使用する水や緩衝液の pH が高いと赤みが強くなる.

E.塗抹後の乾燥はドライヤーの冷風で十分行う.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

ギムザ染色・・・ギムザ染色は細胞診においては体腔液を主とした液状検体や腫瘍の穿刺吸引、擦過材料、特にリンパ節の細胞材料には欠かせない染色である。簡便で迅速に行えることや細胞剥離が少ないことなど多くの利点を有しているが、細胞の重積が著明な場合は染色性が悪くなり、詳細な観察ができにくいことに難点がある。

酸性色素のエオシンと塩基性色素のメチレンブルーにより水や緩衝液のpHが高いと青くpHが低いと赤っぽくなる

 

ギムザ染色の手技

1:塗抹後、急速に乾燥させた標本を100%メタノールで1~3分間固定⇒急速乾燥

2:ギムザ希釈液にて尿や脳脊髄液は 5~10分、その他の検体は20~30分間染色

3:流水にて 10~30 秒水洗後、冷風~温風にて充分乾燥

4:透徹、封入

 

 

技術 問4.正しい組み合わせはどれですか.

A.PAS 反応 ―――――- グリコーゲン ―― 赤紫色

B.Alcian blue 染色 ―- 鉄イオン ―――― 青色

C.Berlin blue 染色 ―- リポフスチン ―― 青色

D.Colloid iron 染色 ― ヘモジデリン ―― 赤色

E.Grocott 染色 ―――- アスペルギルス ― 黒色

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

アルシアン青染色・・・アルシアンブルーは、酸性粘液多糖類中のカルボキシル基ないし硫酸基と結合する。この結合はpHの影響を受け、pH1.0以下では硫酸基のみと結合し、カルボキシル基とは結合しない。

青色:酸性粘液多糖類、上皮性酸性粘液

ベルリン青染色・・・

ヘモジデリンを含有した細胞の3価の鉄イオンがフェロシアン化カリウムと結合し、青色のフェロシアン化鉄が形成される。

青色:ヘモジデリンなど

コロイド鉄染色・・・

アルシアンブルーと同様、酸性粘液多糖類と反応する染色法。コロイド鉄染色はアルシアンブルー染色と比較するとより鋭敏な反応性をもっていることから、とくにヒアルロン酸の証明に用いられる。

青色:酸性粘液多糖類、ヒアルロン酸(ベルリン青を用いるため、ヘモジデリン、無機酸塩類、クリプトコッカスの粘液も陽性となる)

技術 問5.細胞診検体処理に関して正しいものはどれですか.

A.検出率を高めるため,喀痰塗抹はできるだけすり合わせ法で厚く塗抹する.

B.脳脊髄液は抗凝固剤を入れる. 

C.体腔液の湿固定は塗抹後,細胞剥離を防ぐためゆっくり固定液に入れる.

D.液状化細胞診(LBC 法)では重なりの少ない標本ができる.

E.関節液など粘稠性検体はすり合わせ法が適している.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

喀痰塗抹・・・小豆~大豆大の喀痰を片方のスライドガラスに載せ、3cm程度に細長く伸ばし、もう一枚のスライドガラスで挟んで圧力をかけ、喀痰を伸展する。量が多くはみ出た時は紙で拭き取る。前後または左右に引き離し直ちに固定する。すり合わせ回数が多いほど細胞破壊や核線が生じるため3回以内が好ましい。塗抹面は45~50mmの範囲に収まるようにする。

脳脊髄液・・・採取後直ちに800~1000回転で5分間遠心し、沈査をスライドガラスに塗抹する。検体の量が少なすぎて遠心できない場合は、生理食塩水を加えて遠沈する。また、脳脊髄液は腹水あるいは胸水よりも細胞成分が乏しいため、遠沈法では診断に必要な細胞数が塗抹されないことが多く、この場合にはオートスメア法や膜濾過法を行う。さらに脳脊髄液はタンパク含有量が少なく、細胞の膨化あるいは濃縮、固定液中で細胞がガラスから剥離する可能性があり、これらを防ぐために、少量のウシアルブミンやウシ胎児血清を加えることがある。

※抗凝固剤を加えることがあるのは胸腹水。フィブリンが析出しやすいので。細胞が変性するので加えないことも。

固定・・・塗抹後は速やかに95%エタノール固定液に入れる。ゆっくり固定液に入れたら場合、塗抹面に縞模様が出来てしまうのと、乾燥する恐れがあるため、さっと固定液に入れる。

技術 問6.Fluorescence in situ hybridization(FISH)法について,正しいものはどれですか

A.細胞周期の G1 期や S 期の細胞では判定できない.

B.細胞診標本では,エタノール固定ではなくホルマリン固定する事が必須である.

C.ゲノムにおけるある特定の遺伝子の増幅や転座を証明する事が可能である.

D.液状化細胞診(LBC 法)標本でも施行可能である.

E.肺癌における EGFR 遺伝子変異解析に有用な方法である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:4

FISH法・・・in situ ハイブリダイゼーション法は、間期や分裂期の細胞のDNAをスライドグラスの上に貼り付けたものを処理して、特定の塩基配列や遺伝子を可視的に位置づける方法。FISH法は、プローブ DNAを標識物質(ハプテン)で標識し、これとハイブリッドした目的DNAが、ハプテンに対する蛍光色素標識の抗体により検出されるもの。蛍光顕微鏡にて観察する。

<FISH法でわかる染色体異常>

正常、欠失、異数体、転座、増幅

 

※FISH法はパラフィン切片だけでなく、細胞診標本からも可能。ギムザ染色された標本からも可能。LBCも可能。

※FISH法が用いられる腫瘍の遺伝子検査は、HER2(乳癌・胃癌)、EGFR(肺癌・大腸癌)、N-mycなどが挙げられる。

 

技術 問7.免疫細胞化学染色で核内に反応する抗体はどれですか.

A.D2-40(ポドプラニン)

B.PgR

C.Ki-67(MIB-1)

D.EGFR

E.CD56(NCAM)

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

D2-40・・・リンパ管内皮、胎児精巣、精巣胚細胞性腫瘍の細胞表面上が陽性となる。

EGFR・・・細胞膜が陽性となる。

CD56・・・細胞膜が陽性となる。

 

技術 問8.労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則について正しいものはどれですか.

A.発がん性に特化した健康障害を予防するための規則である.

B.病院内では特定化学物質作業主任者を選任する必要はない.

C.従事した労働者の作業記録を 5 年間保存する必要がある.

D.製造メーカーが交付した安全データーシート(SDS)を周知する必要がある.

E.ホルムアルデヒドは第 2 類物質に指定されている.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:5

<労働安全衛生法 特定化学物質障害予防規則>

特定化学物質の安全基準を定めた厚生労働省令。労働者が化学物質による健康障害を受けることを予防する目的で特定化学物質障害予防規則(特化則)が制定され様々な規制が行われている。特定化学物質はこの健康障害を発生させる(可能性が高い)物質として定められたものであり、大別すると微量の曝露でがん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質(第1類物質、第2類物質)と、大量漏洩により急性障害を引き起こす物質(第3類物質、第2類物質のうち特定第2類物質)とがある。

 

第1類物質と第2類物質のうち、がん原性物質またはその疑いのある物質については特別管理物質としており、名称、注意事項などの掲示や、空気中濃度の測定結果と労働者の作業や健康診断の記録を30年間保存すること、事業廃止の際にはこれらの書類を所轄労働基準監督署長に提出することが求められている。

 

 

技術 問9.Papanicolaou 染色のうち誤っているものはどれですか.

A.固定前乾燥によりコーンフレーク状人工産物が生じる.

B.固定前乾燥により腺細胞は収縮する.

C.固定前乾燥により核クロマチンは不明瞭になる.

D.乾燥後アルコール固定した標本では,再水和処理で染色性は改善しない.

E.再水和法ではスキムミルクなどを用いる.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

コーンフレーク状人工産物・・・染色過程の最終段階でキシレンがドーゼに十分分注されていないと、塗抹された細胞の一部が乾燥した状態のまま封入されることになる。その結果、塗抹標本(細胞)と封入剤の馴染みが悪く、茶褐色のアーチファクトが生じる。このような現象を防止するには、十分なキシレン量を分注すること、標本をキシレンから取り出したら速やかに封入することが重要。

固定前乾燥・・・細胞、核が膨化する。異型の指標として最も重要な核クロマチンの観察が困難となる。染色性も変化し、本来ライトグリーン(青緑色)に染まる細胞質が 薄いピンク色やオレンジ色に染まる。全体として焦点の定まらないぼけた標本になる。

 

技術 問10.細胞診標本作製法について誤っているものはどれですか.

A.脳脊髄液中には細胞が少ないため 3000 回転 5 分間で遠心する.

B.体腔液は検体処理までの間,室温より 4℃保管が望ましい.

C.体腔液遠心後,バフィーコート層から沈渣を採取し標本作製を行う.

D.0.9%塩化アンモニウムは溶血に時間を要するが,細胞変性は少ない.

E.オートスメア法やサイトスピン法では溶血操作は不要である.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:2

脳・脊髄液・・・採取後直ちに800~1000回転で5分間遠心

・体腔液・・・細胞の変性を防ぐため4℃保管は望ましい。

 

第49回 技術 問1~問10の解説は以上です。