平成28年第49回

【解答(技術編)】平成28年第49回細胞検査士試験過去問の解説(問11-20)

こんにちは!

あすはやです。

平成28年度 第49回細胞検査士資格認定試験学科筆記試験の解説をしていきたいと思います。今回は技術 問11~問20の解説を行います。

学生で細胞検査士を目指す人、働きながら細胞検査士を目指す人、一緒に頑張っていきましょう!

技術(問11~問20)

技術 問11 免疫細胞化学染色について誤っているものはどれですか

A.ポリクローナル抗体は非特異反応が少ない.

B.ポリマー試薬を用いる場合,内因性ビオチンの影響を考慮する.

C.非特異反応の阻止には,二次抗体と同一動物種の正常血清が用いられる.

D.不十分な内因性ペルオキダーゼの阻止は誤判定となる要因である.

E.自動免疫染色装置で染色を施行した標本においても染色性を確認する.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

A、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体

モノクローナル抗体は対象抗原の一つの抗原決定基に特異的に反応する。しかし、異なる抗原分子上に同一のあるいは近似の抗原決定基が存在する場合、モノクローナル抗体は分子そのものを区別することができず交差反応を示す。一方、ポリクローナル抗体の場合、抗原分子上に存在する多数の抗原決定基に対する抗体が混在しているとともに、単一の抗原決定基に対しても親和性が異なる複数の抗体が認められる。一つの分子上に他分子と構造が類似する抗原決定基も含まれる場合は、ポリクローナル抗体の特異性が問題となる

 

B、内因性ビオチンが問題となってくるのはABC法。この方法ではビタミンHとして知られるビオチンと、その補足蛋白で鶏の卵白に含まれるアビジンとの間の特異的かつ強い結合性を利用したもの。従って内因性ビオチンが存在すると非特異的反応が生じることになり誤診のもとになる。

内因性ビオチンはアルデヒドで容易に破壊されるため、ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた酵素抗体法では問題にならないとされている。しかしながら、甲状腺の乳頭癌などでは、ホルマリン固定パラフィン包埋切片でも内因性ビオチンの擬陽性像をみるそうで。こういう場合にはABC法を用いないほうがよい。

技術 問12.免疫細胞化学染色における非特異反応の防止について,誤っているものはどれですか.

A.使用する一次あるいは二次抗体の濃度を上げる.

B.切片を一旦乾燥させる.

C.PBS による洗浄を十分にする.

D.塩濃度を上げた洗浄用緩衝液を使用する.

E.Tween20 等の界面活性剤を加える.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:1

・background staining(背景染色)の高い、汚い染色像の時の対処法

①使用する一次あるいは二次抗体の濃度を下げる

②切片を免疫染色中に乾燥させない

③洗浄用・抗体希釈用PBSに0.1MのNaClを加える(高張にすることで、組織内荷電物質による非特異的結合が防げる)

④PBSの洗浄を十分に行う

⑤洗浄用のないし抗体希釈用のPBSに0.01~0.2%のTween20等の海面活性剤を加える。荷電物質による非特異的結合が防止される。この場合、切片上に滴下した抗体液の表面張力が不十分となり、切片の乾燥による染色ムラを助長することがあるので、多めの抗体液が必要となるので注意する。

⑥蛋白分解酵素処理を行う

⑦一次抗体および/または標識抗体を抗血清(ポリクローナル抗体)からモノクローナル抗体に変える

⑧一次抗体の反応前に、二次抗体と同種の動物の1~5%の正常血清を10分程度反応させる。または一次抗体の希釈を1~5%の正常血清加PBSで行う。正常血清の代わりに1~5%のウシ血性アルブミンBSAあるいは5~10%のスキムミルクも使用できる。

 

技術 問13.Papanicolaou 染色標本作製法において誤っているものはどれですか.

A.塗抹時の乾燥では細胞が膨化する.

B.封入時の乾燥では細胞にオパーク状核を生じる.

C.染色後の乾燥標本でも再水和法は有効である.

D.固定前に乾燥した標本は赤みを帯びる.

E.脱水が不十分な場合は退色が起きやすい.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

B:封入前乾燥による。染色過程の最終段階でキシレンがドーゼに十分分注されていないと、塗抹された細胞の一部が乾燥した状態のまま封入されることになる。その結果、塗抹標本(細胞)と封入剤の馴染みが悪く、茶褐色のアーチファクトが生じる。このような現象を防止するには、十分なキシレン量を分注すること、標本をキシレンから取り出したら速やかに封入することが重要。

 

C:<再水和処理>

固定前に乾燥した場合、再水和処理後に固定すると細胞質および核の染色性が良好になって判定しやすくなる。ただし、乾燥後アルコール固定した標本では、再水和処理を行っても染色性の改善は望めない。塗抹後乾燥してから再水和処理を施す時間が早いほど、良好な染色性が得られる。遅くても2日以内に再水和処理を行う。なお、細胞成分が非常に少ない標本では効果が少ない。

①未固定で乾燥した標本の上に生食、または血清を満載し30秒~5分間おく。

②軽く水洗した後、95%アルコールで30分以上固定し染色する。

※スキムミルクを用いる方法もある。また生理食塩水処理では オパーク状の核変化等の変性所見を認めたりすることもある。

 

 

技術 問14.穿刺吸引細胞診の実施に際して誤っているものはどれですか.

A.超音波ガイド下で正確に部位を確認し実施できる.

B.降圧剤を服用している場合,穿刺吸引細胞診は実施できない.

C.咳嗽症状が持続しても穿刺吸引細胞診実施には影響ない.

D.抗凝固剤を一時中止する場合がある.

E.ドップラー血流を確認した後の穿刺が推奨される.

1:A B

2:A E

3:B C

4:C D

5:D E

解説

回答:3

<穿刺吸引法>

甲状腺、乳腺などの体表部臓器や軟部組織、表在性のリンパ節などは皮膚から直接あるいはエコーガイド下に専用のシリンジをセットした穿刺針(注射器)で病変部を穿刺して、細胞片を吸引することによって検体を採取する。

※禁忌

臨床でFNABを実施するうえでの禁忌は数少なく、出血性素因、抗凝固療法、動静脈奇形および包虫嚢胞が挙げられる。このほか、吸引の標的が胸部である場合の禁忌として、肺高血圧症、制御不能な咳嗽、進行性肺気腫および息こらえ指示に協力できない患者が挙げられる。

 

技術 問15.誤っているものを1つ選びなさい.

1.顕微鏡で拡大されてみえる範囲は接眼レンズの視野絞りの直径で決まる.

2.対物レンズの倍率を上げると焦点深度は浅くなる.

3.コンデンサーの開口絞りを開くと分解能は低下する.

4.色収差とは,波長によって焦点距離が異なってしまう光線収差のことである.

5.プランアポクロマート対物レンズは,紫,青,赤の3色収差補正がされている.

解説

回答:3

<分解能>

はっきりと識別できる2点の最短距離。分解能=0.61・λ/開口数。

従って高倍率では開口数が大きくなるため分解能が上がる。

技術 問16.誤っている組み合わせを1つ選びなさい.

1.偏光顕微鏡 ――――――――― アミロイドの観察

2.蛍光顕微鏡 ――――――――― FISH 法の判定

3.位相差顕微鏡 ―――――――― 蛍光染色標本の断面像の観察

4.電子顕微鏡 ――――――――― ウイルスの観察

5.微分干渉顕微鏡 ――――――― 生の細胞や組織の観察

解説

回答:3

・位相差顕微鏡

光が厚さ、屈折率の違う物体を通過する際にできる波長のずれ(位相差)を利用する。無色透明な物質内を光がとおるときの位相差を位相差装置で明暗の差に置き換えて観察可能にした顕微鏡。染色の必要がないので培養細胞や体腔液中の細胞を生きた状態で観察できる。

 

技術 問17.細胞転写法に関して誤っているものを1つ選びなさい.

1.1 枚の標本から複数の標本を作製することができる.

2.免疫細胞化学的検索や in situ hybridization(ISH)法に応用することができる.

3.カバーガラスを剥す場合には加温したキシレンを用いると早く剥すことができる.

4.疎水性封入剤のほか,親水性封入剤を使用することもできる.

5.硬化した封入剤を軟化させるためには温水を使う.

解説

回答:4

<細胞転写法>

1、マリノールをキシレンで2倍に希釈、混和。

2、2倍希釈マリノールを1mlスライドガラスに塗布。

3、70~80℃のパラフィン切片伸展機で20~30分マリノールを硬化。

4、温水(50~60℃)に15分間浸し、マリノールを軟化。

5、軟化したマリノールをピンセットなどで剥がす。

6、はさみで分割あるいはマーキング部分を切り取る。

7、切り取った封入剤を水(湯)に浸し、新しいシランコートスライドガラスに張り付ける。

8、余分な水分をキムワイプで吸い取る。

9、75℃のパラフィン切片伸展機で30分ほど乾燥。

10、キシレンでマリノールを除去して使用。

技術 問18.セルブロック法について誤っているものを1つ選びなさい.

1.多数の標本作製が可能である.

2.免疫細胞化学染色が可能である.

3.遺伝子解析が可能である.

4.パラフィンブロックとして後に再利用できる.

5.出現細胞が少ないときに有用である.

解説

回答:5

・セルブロック法

細胞塗抹標本作製後に残存する細胞を多様な方法で効率よく収集し、パラフィンなどに包埋するセルブロック法がある。セルブロック法の利点は、塗抹標本では細胞集塊の構築像を十分把握できない場合などに、包埋・薄切といった組織学的手法にて連続細胞薄切切片を作製し組織像として観察することが可能となることであり、細胞診の診断補助として応用されてきている。

技術 問19.労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定められている有機溶剤として誤っているものを1つ選びなさい.

1.アセトン

2.キシレン

3.メタノール

4.クロロホルム

5.ホルムアルデヒド

解説

回答:5

有機溶剤等とは、有機溶剤または有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤の含有率が5%(重量パーセント)を超えるもの)をいう。

・第一種有機溶剤

クロロホルム

・第二種有機溶剤

アセトン、キシレン、イソプロピルアルコール、メタノール

 

技術 問20.誤っているものを1つ選びなさい.

1.感染性医療廃棄物は,感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物に分類される.

2.病理廃棄物である臓器・組織は感染性産業廃棄物に分類される.

3.医療機関は有機溶剤作業主任者を置かなければならない.

4.橙色のバイオハザードマークは,固形状の感染性廃棄物であることを示す.

5.キシレンは女性労働基準規則の対象物質として指定されている.

解説

回答:2

切除された組織片など 日本では、中絶胎児は妊娠12週以上のものは人として、墓地埋葬法上で遺体として扱い、これらは火葬や土葬の対象となる。それ以外の組織片は、焼却処分される医療廃棄物として扱われる。日本以外では、概ね焼却処分するところがほとんどである。

第49回 技術 問11~問20の解説は以上です。